看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
大人が溶連菌感染症に気づかず放置すると、合併症を引き起こし、状況によっては命に関わるケースもあります。症状は、発熱や喉の痛みといった風邪に似た症状に加え、手足の発疹やイチゴ舌が見られるのが特徴です。潜伏期間は2~5日で、一般的にはキットを用いた方法で検査を行います。治療に使われるのは、殺菌効果のある抗菌薬です。感染を防ぐには、日頃から手洗い・うがいなどの対策を行いましょう。
溶連菌感染症とは、A群β溶血性レンサ球菌と呼ばれる細菌が原因の感染症です。菌の侵入部位や組織によって、急性咽頭炎や扁桃炎、猩紅熱(しょうこうねつ)といった症状を引き起こします。感染症法では、インフルエンザなどと同じく、発生動向の把握が必要な定点報告対象(5類感染症)に位置づけられる感染症です。小児科定点医療機関(全国約3,000カ所の小児医療機関)は週ごとに保健所に届け出る必要があります。
溶連菌感染症は、学童期の小児で流行が見られますが、大人も感染する可能性があるため注意しなければなりません。ピークは、冬および春から夏にかけての期間です。大人の感染原因や症状について、詳しく見ていきましょう。
溶連菌の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は、感染者のくしゃみや咳で飛散したウイルスを吸い込んだり、粘膜に付着したりして感染します。一方で、唾液や鼻水などに触れた手で自分の口や鼻に触れ、感染するのは接触感染です。 お子さんがいるご家庭では、日常的なお世話が欠かせません。同じ空間で過ごす時間が多く、感染しやすくなります。また大人は、生活習慣の乱れや疲労、ストレスによって、自律神経が乱れている方も多いでしょう。自律神経の乱れは免疫機能の低下を招き、感染リスクを高めます。
大人の溶連菌感染症の潜伏期間は2~5日です。突然の発熱や全身の倦怠感、喉の痛みがあらわれます。症状の出方は個人差があり、嘔吐を伴うケースも。代表的な症状は以下のとおりです。
3歳以下の乳幼児や大人が溶連菌感染症にかかると、典型的な症状はあらわれにくく、感染に気づかないケースもあります。しかし放置すると、治療が長期間に及んだり、合併症を引き起こしたりする可能性もあり注意が必要です。リウマチ熱や肺炎、蜂窩織炎などに注意しましょう。
リウマチ熱は、溶連菌感染症の代表的な合併症です。関節や心臓、皮膚、神経系に影響を及ぼします。関節炎や心臓の内膜・心筋の炎症、関節の皮下結節(皮膚の下にできるこぶ)などが代表的です。
肺炎とは、細菌やウイルスによって引き起こされる肺の急性炎症です。発熱や咳、呼吸困難、胸痛といった症状を伴います。溶連菌が直接感染を引き起こしたり、症状を悪化させたりして、肺炎を発症します。
蜂窩織炎とは、皮膚や皮下組織の急性細菌感染です。局所の赤みや腫れ、熱感、痛みがあらわれます。放置すると重症化するため、早めに医療機関を受診するのが重要です。
敗血症とは、感染症によって全身の臓器が機能障害を起こす重篤な状態です。発熱や発汗、頻脈(脈を打つ回数が多い)などが見られます。悪化すると意識がもうろうとしたり、血圧が低下したりして命に関わるケースもあるため、早めの処置が必要です。
溶連菌感染による急性糸球体腎炎は、感染後糸球体腎炎とも呼ばれます。感染から発症までは6~21日程度とされていますが、なかには6週間程度のケースもあるようです。血尿やタンパク尿、むくみ、高血圧の症状があらわれます。
溶連菌感染症の主な検査には、迅速検査、培養検査、血液抗体検査があります。一般のクリニックでよく行われるのは、検査キットを使用した迅速検査です。綿棒で喉の奥にある粘膜を擦って検査し、医師の診察結果も合わせて判断されます。検査結果は5分程度でわかるため、早期の治療が可能です。
一方で、培養検査と血清抗体検査は結果がわかるまで時間がかかります。より詳細な結果がわかるため、入院治療で行われるのが特徴です。
溶連菌感染症と診断されると、抗菌薬による治療が行われます。感染しないためには日頃からの予防が重要です。治療と予防について詳しく見ていきましょう。
溶連菌感染症では、主にペニシリン系抗菌薬による治療が行われます。抗菌薬とは、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする働きのある薬剤です。アレルギーがある場合は、他の薬剤の適応となります。いずれの薬剤も10日は確実に服用する必要があり、医師の指示を守るのが重要です。症状がよくなったからといって途中でやめてしまうと、ぶり返したり、合併症を招いたりします。抗菌薬への耐性(特定の抗菌薬が効きにくくなる)がつき、十分な効果が得られなくなる恐れもあるため、処方どおりに服用しましょう。
溶連菌は飛沫感染と接触感染で広がります。手洗い、うがい、咳エチケットのポイントを見ていきましょう。
食事前や外出から帰った後、人と接触した後は、石けんと流水で手洗いをします。指先や爪の間、指の間や親指の周りは洗い残ししやすいため、丁寧に洗いましょう。
外出から帰った後や人混みに行った後は、うがいをしましょう。喉の粘膜に付着した菌やウイルスを洗い流せます。
咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、袖口で口と鼻を覆いましょう。マスクの着用も、飛沫を防ぐために有効です。
参照:感染症対策へのご協力をお願いします/厚生労働省溶連菌感染症に関するよくある質問は、ワクチンの有無や、病院受診の必要性です。それぞれ解説します。
2025年3月現在では、溶連菌に効くワクチンはありません。日頃から感染予防を徹底し、感染した際は適切な治療を行いましょう。
感染者と接触し、発熱や喉の痛みといった風邪に似た症状があらわれたときは、うつった可能性が高いです。 病院を受診し、適切な診断や治療を受けて重症化を防ぎましょう。内科や耳鼻科、呼吸器内科、感染症内科であれば、検査できる体制が整っています。あらかじめ電話で確認してみるのもよいでしょう。
溶連菌感染症は、子どもだけでなく大人もかかる感染症です。しかし、大人は症状が軽い場合もあり、放置されるケースがあります。適切な治療を受けないと、合併症を引き起こしたり、重症化したりする恐れがあるため注意が必要です。感染者と接触しているときは、体調チェックを欠かさないようにしてください。少しでも感染が疑われるときは、早めに病院を受診しましょう。
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