台風がもたらす災害とは?
日本には、平均して年間約3個の台風が上陸し、例年7月~10月に被害が集中しています。近年は地球温暖化の影響で台風の勢力が強まり、局地的な大雨や風害・水害の被害が深刻化。従来の備えだけでは対応しきれない状況もあるため、対策の見直しが必要です。
参照:「台風の上陸数(2024年までの確定値と2025年の速報値)」/気象庁
台風が引き起こす主な災害
台風がもたらす災害は、多岐にわたります。風害や土砂災害・洪水・高潮のほか、都市部で排水が追いつかずに起こる「内水氾濫」も増えています。ひとつの台風で複数の災害が同時に発生するケースも珍しくありません。
風害
強風で家屋が破損したり、飛来物による被害が発生したりします。電柱や電線が損傷すれば、大規模な停電にもつながりかねません。台風の進行方向右側は強風が吹きやすいため、より注意が必要です。
土砂災害
崖崩れや土石流が発生し、土砂災害を引き起こします。山や丘に住んでいる方は、普段から警戒しておきましょう。
洪水・河川の氾濫
台風や前線による集中豪雨によって川の水位が急激に上昇し、堤防を越えて水があふれ出す「越水」や、堤防そのものが壊れる「決壊」が起こります。住宅や道路が水没し、交通機関のまひ、停電、断水などの深刻な被害に。
内水氾濫
都市部特有の水害です。排水能力を超える雨量により、用水路や下水道が機能不全を起こします。河川が近くになくても浸水被害が発生する恐れがあるため、油断は禁物です。
高潮・波浪
海に近い地域で起こりやすい水害。低気圧と暴風により、海面上昇と高波が起こります。とくに湾岸地域では、浸水被害に注意が必要です。
台風に伴って発生する二次災害・事故
台風によって引き起こされるのは、風や雨による直接的な被害だけではありません。増水した川を見に行って流される事故や、浸水した道路で側溝に気づかず転落する事故など、これまで多くの二次災害が発生しています。
近年の主な台風・豪雨災害
近年、日本では台風や豪雨による大規模な災害が相次いで発生しています。とくに2014年以降は、深刻な被害をもたらす台風が増加しています。
参照:「大雨や台風の気象情報に注意して 早めに防災対策・避難行動をとりましょう」/政府広報オンライン
台風が来る前の対策
台風に備えるためには、事前の準備が重要です。強風・雨天時の屋外作業は危険を伴うため、屋根の補修や庭木の剪定は台風シーズン前に済ませておきましょう。
家の中の備え
窓ガラスの飛散防止や、断水・停電に備えてスマートフォンやモバイルバッテリーの充電を行いましょう。持ち出し袋や備蓄品も、今一度チェックを。
窓ガラスの飛散防止対策
飛散防止フィルムや養生テープを貼り、風や飛来物で窓ガラスが割れるのを防ぎましょう。カーテンやブラインドを下ろしておくだけでも、一定の効果があります。
べニヤ板で窓を覆うのも、ガラスを守る効果が期待できます。ただし、取り付けや取り外しの際に外壁や窓枠を傷つけたり、強風によって板が外れたりする可能性もあるため、注意が必要です。
断水・停電への備え
断水に備えて浴槽に水を張っておきましょう。最低限の生活用水を確保でき、トイレや手洗いに役立ちます。停電を見越して、スマートフォンやモバイルバッテリーは早めに充電を。電動シャッターや電気錠のある家庭では、停電時の操作方法を事前に確認。必要に応じてブレーカーを落とせるように準備しておきましょう。冷蔵庫が使えなくなるため、あらかじめ保冷剤を凍らせておくのもおすすめです。
家の外の備え
飛ばされやすい物干し竿や植木鉢は、室内へ避難させましょう。プロパンガスやエアコンの室外機はしっかり固定を。雨戸・シャッター・網戸の点検もしておきます。玄関には土のうや水のうを設置し、庭木は剪定や固定で倒木対策を行いましょう。
飛ばされそうな物の移動・固定(サイクルハウス、物干し竿)
強風に備え、物干し竿や植木鉢、庭の遊具、看板などは室内にしまいましょう。サイクルハウスやプロパンガスボンベ、エアコンの室外機、物置といった大型の物はチェーンや重りで固定すると安心です。ブロック塀やアンテナのぐらつきも確認を。
雨戸・シャッター・網戸の点検と固定
雨戸・シャッターがスムーズに開閉できるか、網戸が外れそうになっていないかを確認しておきましょう。
側溝・排水溝・雨どいの掃除
落ち葉やゴミが溜まったままでは、雨水があふれる原因に。前もって除去し、水はけをよくしておきましょう。
車やカーポート、バイクの対策
車・バイクのカバーを点検し、カーポートの周辺にある小物は片付けて、飛来物による傷を防ぎましょう。屋根材をあらかじめ外しておく方法もあります。ガソリンスタンドが混雑する前に、早めに給油しておくのを忘れずに。
土のう・水のうの設置
玄関・勝手口に雨水が入り込まないように、土のうや水のうを設置しましょう。土のうはホームセンターで購入できますが、ゴミ袋に水を入れた簡易水のうでもOKです。
庭木の手入れ・固定
枝を剪定しておき、風による倒木リスクを軽減しましょう。強風に備え、支柱やロープで固定するのも大切です。
台風が来たときの対策
台風時は、屋内で安全に過ごすのが最優先です。浸水や停電に備え、戸締りや水の確保も忘れずに。無理な出勤・通学は控え、早めの帰宅を心がけてください。
屋内での安全を確保する
強風や大雨が来たら、安全な場所で身を守りましょう。断水に備えて水を確保し、食事や入浴は早めに済ませておくと安心です。
窓から離れて過ごす
強風や飛来物によって、窓ガラスが割れたり飛散したりする恐れがあります。できるだけ窓から離れて過ごし、就寝時も窓やドアから距離をとりましょう。
2階以上の部屋で過ごす
浸水に備えて、できるだけ2階以上で過ごしましょう。とくに夜間や就寝時は浸水に気づきにくいため要注意です。斜面や崖のそばに住んでいる方は、離れた側の部屋で過ごしてください。貴重品や持ち運べる家電製品も上階へ移動を。
戸締り・家電の故障対策
窓・ドア・雨戸・シャッターのロックを確認しましょう。ガレージや小屋の戸締りも忘れずに。サッシや下枠の浸水に備え、タオルや吸水シートを敷いておくと安心です。家電のコンセントは抜き、できる範囲でブレーカーを落としておきましょう。
食事・入浴を早めに済ませる
断水すると、入浴はもちろんトイレや食事にも支障をきたします。食事や入浴はできるだけ早めに済ませ、浴槽やバケツに生活用水を確保しておきましょう。
外出を避ける
台風接近中の外出は非常に危険です。実際、亡くなった方の多くが屋外で被災しています。とくに車での移動は、道路の冠水による事故や、川への転落などの原因に。また、無理な出勤・通学は避け、やむを得ず外出するときは、雨風が強まる前に早めに帰宅をするよう心がけましょう。
台風で慌てないために、普段からしておくべき備え
台風による災害に備えるには、日頃からの準備が重要です。自宅周辺の浸水や土砂災害などのリスクをハザードマップで確認し、避難場所や経路を家族で共有しておきましょう。過去に起きた台風が、居住地域でどのような被害をもたらしたのかを知っておくと、より具体的に対策を立てられるでしょう。さらに、近所づきあいを大切にし、住まいの設備の点検・補強を行うのも、いざというときに自分や家族を守る大切な備えとなるはずです。
ハザードマップを確認しよう
台風に限らず、自然災害の対策に役立つのがハザードマップです。自宅周辺の浸水・土砂災害・低地などのリスクを把握できます。自治体ごとにインターネット上で公開されているので、平常時に確認し、通信状況が悪いときや停電時に備えて印刷しておきましょう。避難ルートも併せてチェックしておくと安心ですね。
避難の準備をしておこう
避難場所や経路を家族で共有し、実際に歩いて安全を確認しましょう。災害時に迷わず行動できるよう「マイ・タイムライン(防災行動の計画表)」を作成し、見える場所に保管を。連絡手段として災害用伝言ダイヤル(171)の使い方も家族で確認しておくと安心です。
避難場所と経路の確認
自宅で被災した場合の避難場所を確認し、家族で共有しましょう。勤務先や子どもの通学先の避難所も知っておくと不安が減ります。避難経路を実際に歩き、途中で危険な箇所はないか確認しましょう。
マイ・タイムラインの作成
マイ・タイムラインとは、災害時に自分がいつ・何をするかをあらかじめ決めておく「防災行動の計画表」です。警戒レベルごとに、「誰が・いつ・何をするか」を整理しておけば、いざというときに迷わず命を守る行動ができます。
作成には、自治体や国土交通省のホームページを参考にしましょう。家族全員で共有し、すぐに取り出せる場所に保管するのがおすすめです。
参照:「マイ・タイムライン」/国土交通省
連絡手段の確認
災害用伝言ダイヤル(171)は、災害発生時に被災地の安否を音声で伝達・確認できるサービスです。NTT東日本とNTT西日本の協力により運営されています。
携帯電話がつながらない状況に備え、家族で使い方を確認しておきましょう。
参照:「災害用伝言ダイヤル(171)ご利用方法」/NTT東日本
地域の人とつながっておこう
近所づきあいも、立派な災害対策のひとつです。普段から挨拶や声かけを習慣づけておきましょう。高齢者や障害のある方、小さな子どものいる家庭の状況を把握しておけば、非常時に手助けできます。
地域の防災訓練や防災に関する講演会にも、ぜひ一度は参加を。地域の防災対策が分かり、知り合いも増えます。
非常時の持ち出し袋・防災グッズチェックリスト
非常用持ち出し袋は、すぐに取り出せる場所に置いておきましょう。自宅での避難に備えて、食料品や水・日用品の備蓄も欠かせません。中身は季節ごとに確認し、家族構成や状況に合わせて見直しておきましょう。
飲料・食料
水道やガス、電気が使えなくなる想定で準備します。被災すると心も疲れるので、栄養面の配慮だけでなく、甘いお菓子や好きな飲み物・食べ物も備蓄しておきましょう。
- ・ ペットボトルの水(1人あたり500ml~1L)
- ・ 乾パン・クラッカー・ビスケット
- ・ 缶詰(プルタブ式)・レトルト食品
- ・ アルファ化米
- ・ チョコレート・キャンディなど甘いお菓子
- ・ 家族が好きな飲み物
- ※赤ちゃんがいる家庭
- ・ 粉ミルクまたは液体ミルク
- ・ 哺乳瓶
- ・ レトルトの離乳食
衛生・健康用品
台風時は、気温・天候の変化や、疲れ・ストレスで体調を崩しやすくなります。急な頭痛や発熱にも対応できるよう、鎮痛薬やかぜ薬を準備しておきましょう。
- ・ 救急セット(ばんそうこう・消毒液・包帯)
- ・ 頭痛薬
- ・ かぜ薬
- ・ 胃腸薬
- ・ 病院から処方されている薬
- ・ 処方箋の控え
- ・ マスク
- ・ ウェットティッシュ・除菌シート
- ・ 携帯トイレ
- ・ 生理用品
- ・ 歯ブラシセット
- ・ ティッシュペーパー
- ・ トイレットペーパー
- ※赤ちゃんがいる家庭
- ・ 紙おむつ
- ・ おしりふき
衣類・防寒具
災害時は、雨で衣服が濡れてもすぐに着替えられない可能性があります。とくに下着は多めに用意しておくと安心です。雨具は傘ではなく、両手が空くレインコートやポンチョを。成長期の子どもがいる家庭では、サイズアウトしていないか定期的にチェックしましょう。
- ・ 下着(最低1~2日分)
- ・ タオル
- ・ 雨具(レインコート・ポンチョ)
- ・ 軍手
- ・ 防寒具
- ・ 靴(履きなれたスニーカー)
照明・電池・携帯電話関連
停電時に備え、明かりの確保と、電化製品の充電手段を整えておきましょう。避難所ではスマートフォンの充電に行列ができます。家族全員が充電できるだけの準備を。
- ・ 懐中電灯(LED推奨)
- ・ 携帯ラジオ(手回しや乾電池式)
- ・ モバイルバッテリー(満タンに充電しておく)
- ・ 乾電池
- ・ スマートフォン対応の乾電池式充電器
貴重品・個人情報
キャッシュレス決済が普及してきたとはいえ、災害時にはまだまだ現金が必須です。とくに小銭や千円札を用意しておきましょう。家族がバラバラの状態で被災した場合に備え、連絡先を紙で控えておくのも大切です。
- ・ 現金(小銭・千円札)
「資格情報のお知らせ」の紙またはコピー。もしくはマイナ取得者向けポータルサイトから家族分の「医療保険の資格情報」をダウンロードしPDFデータや印刷で持参(「マイナ保険証」のコピーは無効のため)
- ・ 身分証明書のコピー
- ・ 預金通帳・印鑑(コピー可)
- ・ 家族の緊急連絡先メモ
- ・ 筆記用具・メモ帳
備蓄品・用意しておきたい便利アイテム
防災用品は、地震以外の災害時にも活躍します。冬の寒い時期に備え、使い捨てカイロや防寒具もあると安心です。眼鏡や入れ歯は壊れたり水没したりする恐れがあるので、予備の準備を。
- ・ 備蓄用食料
- ・ ヘルメットまたは防災頭巾
- ・ 缶切り・ナイフ
- ・ カセットコンロ
- ・ カセットコンロ専用ガスボンベ
- ・ ライター・マッチ
- ・ 使い捨てカイロ
- ・ ゴミ袋
- ・ ロープ
- ・ 紙の地図
- ・ 予備の眼鏡や入れ歯
台風対策は情報が命
信頼性の高い官公庁や自治体の情報源を、日頃からチェックする習慣を身につけておきましょう。気象庁HPのURLをブックマークし、自治体のSNSアカウントをフォローしておくと、いざというときに役立ちます。
気象庁による公式情報
台風接近時には、気象庁から注意報・警報が発令されます。避難の判断に役立つため、最新の状況をチェックしましょう。
気象庁ホームページ
台風や大雨、地震など、幅広い情報が手に入ります。警報・注意報もリアルタイムで確認可能。気象庁のXアカウントやYouTubeチャンネルへのリンクもあります。
参照:「防災情報」/気象庁
キキクル
気象庁が提供している、災害の危険度を地図上にリアルタイムで表示するサービスです。土砂・浸水・洪水について、地図上に危険度が「白・黄・赤・紫・黒」の5段階で表示され、避難すべきかどうかの判断に役立ちます。
参照:「キキクル」/気象庁
自治体による情報提供
事前登録制のメールサービスや、公式X(旧Twitter)で災害情報を発信している自治体が増えています。避難所や危険区域の情報など、地域に特化した情報を得られるのがメリットです。また、昔ながらの広報車も頼りになります。
テレビ・ラジオ
テレビやラジオは、避難指示や被害の状況を速報で伝えてくれます。とくに、番組放送中の速報や割り込みでの報道は、緊急性が高いので注意を向けましょう。
もしものときは早めの避難が重要
台風・大雨の際は「迷ったら避難」が原則です。ただし、状況によっては自宅で過ごすほうがよいケースもあるので、自治体からの避難指示や情報をチェックして判断しましょう。
避難情報の種類ととるべき行動
国では、警戒レベルを「1」から「5」まで定めています。警戒レベル3「高齢者等避難」は、高齢者に限らず、状況に応じて避難の準備をし、危険を感じたら自主的に避難するタイミングです。
警戒レベル4「避難指示」は、災害の恐れが高い場合に発令されます。警戒レベル5は、すでに安全な避難ができない危険な状況です。警戒レベル4の段階で、全員避難しましょう。
土砂崩れの可能性がある地域では、家の近くで小石の落下や新たな湧水、湧水の濁り、斜面の亀裂などが見られたら危険サイン。自治体からの情報がなくても、避難を検討してください。
参照:「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」/内閣府(防災担当)・消防庁
避難前の確認事項
避難時は、火災・漏電・防犯に気をつけましょう。避難経路は最新情報と照らし合わせて確認し、安全第一での避難を。
ガスの元栓を閉め、ブレーカーを落とす
火災・漏電などの二次災害を防止するためにも、ガスの元栓チェックとブレーカーを落とす行動は忘れずに。浸水後は、電気工事士の点検を受けるまで通電してはいけません。
戸締りを確実に行う
窓や玄関、シャッターは確実に施錠を。災害時の空き巣被害を防げます。防犯対策として、ラジオをつけたままにしておくのも有効です。
避難経路・避難場所の再確認
通行止めや危険箇所がないか、最新の災害情報と照らし合わせて確認しましょう。側溝やマンホール、地下道は危険ポイントです。避難時にも決して近づかないでください。
最低限の荷物・服装で避難を
避難時には、両手が空くリュックと、動きやすいスニーカーを選びましょう。長靴・サンダルは、転倒や浮力の危険があるので避けましょう。
避難時の行動の注意点
避難時は、河川沿いや崖沿い、地下を避け、安全なルートを選んでください。できるだけ2人以上で行動し、小さな子どもや高齢者、身体の不自由な方がいる家庭では、余裕をもった避難が大切です。
状況によっては「外に出ず垂直避難」が安全なケースも
夜間や浸水時の避難は、とくに注意が必要です。内閣府・消防庁によると、以下「3つの条件」を満たす環境であれば、浸水の危険があっても自宅に留まる「垂直避難」が可能です。
<自宅で安全を確保する目安>
- (1)家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
- (2)浸水深より居室が高い場所にある
- (3)水がひくまで我慢でき、水・食料などの備えが十分
- ※(1)家屋倒壊等氾濫想定区域や(3)水がひくまでの時間(浸水継続時間)はハザードマップに記載がない場合もあるので、お住まいの市町村に問い合わせてください。
参照:「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」/内閣府(防災担当)・消防庁
備蓄は「賢い」ローリングストック法で
食料品や日用品を多めに買っておき、古い品から消費して使った分を買い足す「ローリングストック法」。多くの方に知られていますが、蓄えの質を高めるにはコツがあります。
まず、栄養バランスだけでなく、家族の好みにも配慮してストックするのがポイントです。お気に入りのお菓子や飲み物などの嗜好品があると、非常時のストレスを減らせます。また、夏場には塩分補給ができる食材、冬場には温めて食べられるスープ類など、季節に応じて備蓄品を調整しましょう。
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。