看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
生活習慣が原因となり、健康診断で指摘される検査項目にはさまざまな種類があります。なかでも血圧や中性脂肪、コレステロール、血糖の数値が高めである場合、早めに改善する必要があるでしょう。将来の健康に影響を及ぼす可能性があるからです。今までの食生活や運動習慣、喫煙や飲酒の習慣を見直し、対策していきましょう。健やかな毎日をサポートするために、特定の機能を持つ食品を活用するのも方法のひとつです。
健康診断の主な目的は、異常の早期発見や早期治療、将来に向けた健康リスクの予防です。検査項目の意味を理解すれば、健康意識を高められ、生活の見直しや改善につなげられるでしょう。生活習慣の影響を受けやすい6つの項目について解説します。
血圧とは、血管を流れる血液が血管の壁を押す力です。心臓が収縮して血液を送り出すときの血圧は収縮期血圧(最高血圧)、心臓が拡張したときの血圧は拡張期血圧(最低血圧)といいます。
血圧に関わっているのは自律神経です。活動しているときや緊張しているときは交感神経が優位になり、血管の収縮で血圧が上昇します。一方、休息しているときやリラックスしているときに優位になるのは、副交感神経です。血管は拡張して血圧が低下します。塩分のとりすぎや気温の変化、ストレスは血圧に影響を及ぼす要因です。
中性脂肪は、血液中に溶け込んでいる脂質のひとつです。トリグリセリドともいわれ、体を動かすときのエネルギー源として使われます。食事から取り込まれたり、肝臓で合成されたりして全身に運ばれ、臓器や筋肉が動くためのエネルギー源となるのです。使われずに余った脂質は、皮下脂肪や内臓脂肪となり蓄積します。また、内臓の保護や体温維持でも重要な役割を担っています。
コレステロールも脂質のひとつです。悪者のイメージが強いですが、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作る材料で、人間の体に欠かせない成分です。およそ2~3割が食事から取り入れられ、7~8割は肝臓で合成されます。
コレステロールにはHDLコレステロールと、LDLコレステロールがあります。HDLコレステロールは「善玉」とも呼ばれ、血管壁にたまったコレステロールを回収するのが役割です。一方LDLコレステロールは「悪玉」として知られており、コレステロールを体全体に運びます。2つのコレステロールは通常バランスを保っていますが、バランスが崩れると健康に影響を及ぼすのです。
Non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた数値です。動脈硬化のリスク判定に用いられます。中性脂肪が高い方は、とくに注目すべき検査値です。2018年から特定健診に加えられるようになりました。
血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度です。数値によって、ブドウ糖がエネルギー源として適切に使われているかどうかがわかります。ブドウ糖の原料は、主にご飯やパンといった炭水化物です。
食事をとると血糖は上昇しますが、インスリンと呼ばれるホルモンの働きにより一定のレベルに保たれます。しかし、インスリンの効きが悪いと、血糖が高いままになり、全身の臓器にさまざまな影響をもたらすのです。とくに、神経や血管が障害を受けやすいとされています。
BMIとは、国際的に用いられる体格を表す指数です。肥満や低体重の判定に用いられます。「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出できる数値です。
健康診断の検査結果でとくに注目したいのは、血圧や中性脂肪、コレステロール、血糖の数値です。「要注意」あるいは「異常」と指摘されたときは、生活習慣を見直す必要があります。基準範囲と要注意、異常の基準は以下のとおりです。
※将来、脳・心血管疾患発症しうる可能性を考慮した基準範囲
参照:検査表の見方/公益社団法人 日本人間ドック・予防医療学会健康診断で、血圧・中性脂肪・コレステロール・血糖の数値が高いと指摘を受けた方は、生活習慣を見直す必要があります。健康リスクを高める要素を見ていきましょう。
欠食や不規則な食事が続くと、健康リスクが高まる可能性があります。空腹の時間が長かったり、ドカ食いしたりすると、血糖値が急上昇するかもしれません。外食が多い、野菜や果物の摂取量が少ない、好きな食べ物に偏るなどの場合も、栄養のバランスが崩れて体のトラブルが起きやすくなるでしょう。
運動する時間が1週間で60分未満である場合は、運動不足といえます。健康を維持するための機能が低下したり、筋力が低下したりする可能性も。老後の生活に影響を及ぼしかねません。また、消費するカロリーが少ないため、体脂肪や内臓脂肪がたまり、肥満になりやすくなります。デスクワーク中心の方は、体を動かす機会が少ないため、運動不足になりやすいといえるでしょう。
喫煙は、循環器・呼吸器の病気、がんといったさまざまな病気の危険因子であるのがわかっています。ニコチンやタールには、多くの有害物質が含まれており、受動喫煙による健康被害も報告されています。
また、お酒の飲み過ぎもよくありません。健康だけでなく、仕事の生産性低下にもつながるため、節度を持った飲酒を心がけましょう。
健康診断の結果を改善し、将来の健康リスクから身を守るには、規則正しい生活やバランスのとれた食事、定期的な運動が欠かせません。禁煙や節度ある飲酒、ストレスとうまく付き合うといった心がけも大事です。1日でよくなるわけではないので、習慣化しましょう。
同じ時間に起床、就寝し、生活リズムを作るのが重要です。起床後は朝日を浴びて、体内時計のスイッチをリセットしましょう。睡眠の質を高めるためにも効果的です。
また、スマートフォンやパソコンを寝る直前まで使用するのはよくありません。眠りが浅くなり、体の休息が十分でなくなる可能性があります。寝室には置かないのが望ましいです。
食事は、健康診断で指摘されやすい血圧値や中性脂肪値、コレステロール値に大きな影響を及ぼします。できるだけ規則正しい時間に食べる、野菜やきのこ・海藻類をたっぷりとる、良質な油をとるなど心がけてみてください。食事のポイントを見ていきましょう。
食事はできるだけ、一定の時間にとるようにしましょう。血糖値をコントロールするために重要です。
野菜は、ビタミン類・ミネラル類・食物繊維など体の調子を整える栄養素を含んでいるため、たっぷりとるようにしましょう。加熱調理するとカサが減るため、量を多くとれるようになります。1日の摂取量は350gを目標にしてください。
また、きのこや海藻類にも食物繊維が含まれています。食物繊維には、血糖値の上昇を緩やかにする、コレステロール値を低下させるといった機能があるため、積極的に摂取しましょう。
塩分のとりすぎは、病気をもたらす原因のひとつです。漬け物や塩辛などは食べる回数を減らしたり、量を減らしたりしましょう。醤油や味噌のほか、ソースやトマトケチャップといった調味料にも注意が必要です。過剰に使用すると塩分をとりすぎる可能性があります。
日本人の食事摂取基準(2025年版)で掲げる1日当たりのナトリウム(食塩相当量)の目標量は、男性7.5g以下、女性6.5g以下です。
おかずは、良質な脂質を含む食べ物の中から選んでみてください。肉より魚を選ぶとよいでしょう。とくに、サンマやイワシといった青魚がおすすめです。青魚には中性脂肪の低下が期待できる「EPA」や「DHA」といった油が含まれています。
また、アマニ油を摂取するのもよいでしょう。アマニ油に含まれるα-リノレン酸には、LDLコレステロール値を低下させる機能があります。加熱すると酸化が進むため、食事で利用する際は、食べ物や飲み物にかけるようにしましょう。味噌汁や納豆、サラダ、ヨーグルトなどが向いています。
運動習慣を身につけましょう。はじめは、手軽な運動から行ってみてください。散歩やウォーキングがおすすめです。運動を継続すれば、健康診断で指摘されやすい数値の改善が見込めます。景色を眺めながらのウォーキングは、体にいいだけでなく、気分のリフレッシュにも効果的です。週2回以上、1回30分以上の息が少しはずむ程度の運動を行いましょう。
喫煙は健康にとって多くのリスクを伴います。持病を悪化させたり、大きな病気を招いたりする可能性が高いです。できるだけ早めの禁煙が推奨されます。なかなかやめられないときは、禁煙補助剤の利用や禁煙外来の受診を検討しましょう。
飲酒は適量を心がけましょう。1日のアルコール摂取量は「20g以下」が目安です。ビールなら500ml1缶程度、清酒なら1合(180ml)程度です。食べながら飲む、お酒と同じ量の水を飲むと二日酔い対策にもなります。また、週に2日は休肝日を設けましょう。
質のよい睡眠は、健康を維持するための重要な要素です。日中はできるだけ日光を浴びる、寝室の温度は暑すぎず寒すぎない温度にする、就寝の1~2時間前に入浴するといった方法を取り入れてみてください。
参照:健康づくりのための睡眠ガイド2023/厚生労働省現代社会は、ストレスを抱えやすい環境です。過剰なストレスは、心身にさまざまな不調をもたらします。ただし、すべてのストレスが悪いわけではありません。ストレスとうまく付き合うのが重要です。スポーツや趣味、旅行など、自分に合ったストレス解消法を持ちましょう。
健康診断や人間ドックで血液検査の数値が悪くても、自覚がない場合も多いため、放置してしまう方もいるかもしれません。しかし、生活習慣を改善しないと、将来大きな病気を招くリスクがあるため、できる対策からはじめてください。家族と一緒に食事や運動対策を行えば、家族みんなの健康にもつながるでしょう。
また、健康診断は定期的に受けるのが大事です。とくに「特定健診・特定保健指導」の対象となる40歳以上75歳未満の方は、毎年受けるのが望ましいでしょう。もし、診断結果で異常が認められた際は、必ず二次検査を受けるようにしてください。
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