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「生理用品とは何か」歴史をたどりながら解説。フェムテック・フェムケアの広がりが生理にあたえる影響とは?

生理・月経SANITARY ITEMS
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2023/10/11

近年のフェムテック・フェムケアの普及に伴い、生理用品は「生理を自分らしく過ごすための女性の相棒」へと変化しています。
ところが、便利で画期的な生理用品「ナプキン」が登場したのは、わずか60年前。それ以前は、紙や布を使用した生理用品が使われていました。
生理用品は、どのような変化を遂げていったのでしょうか。日本と世界、それぞれの生理用品の歴史をみていきましょう。

 

そもそも生理用品とは。選択肢が急増しつつある現代

生理用品とは、女性の月経(生理)における経血を処理するためのアイテムです。
みなさんは生理用品と聞くと何を思い浮かべますか?多くの方が「ナプキン」と答えるのではないでしょうか。たしかにナプキンは代表的な生理用品ですが、現代の生理用品はより自由な選択肢が増えました。
さらに、「生理用品=ナプキン」の考えは、ひと昔前のものになりつつあります。女性が自分らしく過ごせる生理用品が多く台頭しているのです。

ナプキンでは補えない不快さに目を向けたアイテムが増加

たとえば、「第3の生理用品」として台頭した「月経カップ」。膣内にカップを装着して、経血をダイレクトに受け止める生理用品です。経血が外へ出ないため、不快なドロッとでる感覚や経血のニオイが気になりません。また、繰り返し使える仕様から、エコで経済的なため、サスティナブルだと注目を浴びています。

「使い捨て」ではなくサステナブルな視点へ

地球温暖化や森林伐採などの環境問題に対する危機感の高まりから、サステナブルな製品が人気を集めています。その傾向から、生理用品も使い捨てではなく、再利用できるものが注目されているのです。

また、経済格差による「生理の貧困」といった社会問題も、サステナブルな生理用品の普及に関係しています。

 

【日本】生理用品の歴史と生理への付き合い方

昔はナプキンやタンポン、ましてや吸水ショーツのような便利な生理用品はありませんでした。では、昔の日本人女性は生理とどのように付き合ってきたのでしょうか。
生理用品の歴史とともに、生理への付き合い方がどのように変化してきたのかをみていきましょう。

平安時代から布製の生理用品が用いられていた

日本最古の医学書「医心方」に、平安時代に布製の生理用品「月帯(けがれぬの)」が用いられていたと記されています。月帯はふんどしに似た形をした布をしており、布と股の間に経血を吸収するための当て布を挟んで使用していました。
身分の高い女性は当て布に真綿を用いていましたが、一般の人は植物の繊維で作られた葛布(くずふ)や、トイレットペーパーとして用いられていた浅草紙を使用していました。植物の葉っぱを使用していたとの説もあります。

「生理=穢れ(けがれ)」とみなす風習

当時の生理は「穢れ(けがれ)」と扱われており、生理中の女性を小屋に隔離したり、食事に使う火をわけたりという風習がありました。生理の血がけがれているとみなし、月経のある女性自体を禁忌(タブー)とする「月経禁忌」の慣習が、中国から伝来したためだと考えられています。長い間「生理は恥ずかしいもの」と考えられていたのは、月経禁忌の考えの影響もあるでしょう。

明治時代には「月経帯」が登場

明治時代に入ると「月経帯」と呼ばれる生理用品が登場します。月経帯は、手ぬぐいなど布でT字帯を作り、当て布や紙を押さえるサニタリーショーツのようなアイテム。大正時代には、ゴムを用いた月経帯が普及し、多くの女性に行きわたります。
当て布にも変化が訪れます。これまでは紙が多く使用されていましたが、1886年(明治19年)に「脱脂綿」が日本薬局方に認定され、体液吸収に効果のある医薬品として普及し始めたのです。
生理との向き合い方が大きく変わったのも、明治時代です。
明治初期には月経禁忌が廃止され、婦人衛生雑誌には月経時の禁止事項(長時間の歩行や直立、乗馬、体操など)が掲載されたり、衛生面での問題に触れる機会が増えました。富国強兵の流れから、丈夫で強い子どもを産むために生理が重要視されたからと考えられます。

昭和時代に生理用品の革命といわれている「ナプキン」が普及

1961年(昭和36年)、生理用品の革命といわれているナプキンが登場します。便利なナプキンは、生理に悩まされていた女性たちの心に強く刺さり、爆発的に普及しました。使い捨てナプキンの台頭は女性の社会進出を促した、と言われているほどです。
その後、オイルショックによる紙不足をきっかけに、現在のナプキンにも吸水体として使用されている「綿状パルプ」が普及します。昭和後期には、高分子吸収剤を使用したナプキンが登場し、使用感も向上しました。

平成から令和にかけて生理問題は社会問題に

ナプキンが普及して以降、生理用品はドラッグストアやスーパー、コンビニにも並ぶようになり、誰もが手に取りやすいアイテムへと変化しました。近年では、女性の社会進出やSDGsの観点から、快適でサスティナブルな生理用品が注目を集めています。
一方で、経済的な理由で生理用品を購入できない「生理の貧困」が問題視されているのも事実。生理の貧困は、日本だけでなく、全世界の大きな社会問題です。生理用品の無料配布や寄付といった対策が講じられていますが、生理や生理用品との付き合い方はまだまだ発展途上なのです。

 

【アメリカ】生理用品の歴史と生理への向き合い方

日本では、生理用品が普及するまでに長い年月を要しました。では、世界の生理用品の歴史はどうなのでしょうか。まずは、アメリカの生理用品の歴史をみていきましょう。

1910年代に使い捨ての生理用品が登場

アメリカで使い捨ての生理用品が登場したのは、1910年代。日本で使い捨てのナプキンが発売されたのが1960年代だったので、先駆け50年も前から使い捨ての生理用品が普及していました。
1920年代には夜用のサニタリーショーツが登場。さらに1930年代にはタンポンと同時に、月経カップも誕生しました。
アメリカでは、日本よりも生理用品の発展や普及が1歩も2歩も進んでいたのです。

現在のアメリカではタンポンの使用が主流

日本ではナプキンの使用率が9割以上、タンポンの使用率は1割を切っています。
いっぽうで、アメリカの生理用品はタンポンが主流に。ほかにも、布ナプキンや月経カップ・スポーツ用ナプキン・オーガニック素材のナプキンなど、生理用品の種類が豊富なのも印象的です。
また、ニューヨーク市を皮切りに、アメリカ国内の各州で生理用品の無償化がスタートしました。大手薬局が生理用品の値段を引き下げたり、消費税撤廃に向けて動いたりと、社会全体で生理へ向き合う姿勢をみせています。

 

【ヨーロッパ】生理用品の歴史と生理への向き合い方

続いて、ヨーロッパでの生理用品の歴史を紐解きつつ、生理への向き合い方をみていきましょう。

中世や近世では生理は重要な健康問題とされていた

中世や近世のヨーロッパでは、生理が一族の存続にかかわる重要な健康問題とされており、正しい月経周期を促す方法を模索したり、男女で生理について話し合ったりしていたそうです。ところが、中産階級が台頭した19世紀ころ、新たな社会規範が生まれて生理はタブー視されるようになりました。
ちなみに、中流階級以上の女性は、衣類を結んだり、ホックで留めたりして経血を受け止めていましたが、なかには経血を垂れ流しにしている人もいました。やがて19世紀の終わり頃、イギリスを中心に初期の生理用品が登場したのです。

現在は公立の学校で生理用品の無料配布が始まっている

現在のヨーロッパでは、ナプキンとタンポン、いずれも幅広く使用されています。
たとえば、イギリスではタンポンとナプキンどちらも使用されており、比較的高性能なナプキンがラインナップされています。また、ドイツではタンポンが主流。ですが環境に配慮して、エコな月経カップや吸水ショーツもドラッグストアに並んでいます。
注目したいのは、生理の貧困対策のため、スコットランドで2018年9月から、イングランドで2020年1月より、公立の小~高校で生理用品の無料配布が始まっている点です。
フランスの一部高校でも、2020年9月よりオーガニック生理用品の配布を始め、無料のタンポンとナプキンのディスペンサーを設置しています。

 

現在では、フェムテック・フェムケアが世界中で注目

「生理用品とは何か」歴史をたどりながら解説。

フェムテックとフェムケアは、どちらも女性の健康に関する課題を解決するサービスや商品を意味します。
女性のからだ特有の健康に関する課題を、テクノロジーによって解決するのがフェムテック。デジタルなテクノロジーを使わずに女性の身体をケアするのがフェムケアです。

女性の社会進出やジェンダー平等意識の高まりによって、より女性の健康問題にやさしくアプローチするフェムテック・フェムケアのサービスと商品は、急激に世界的な広がりをみせてます。
月経カップ・吸水ショーツ・デリケートゾーンアイテムはもちろん、生理周期・排卵日を把握し、PMS・妊娠・更年期対策をしやすくする専用アプリサービスも。
SNSなどを通じて悩みをオープンに積極的に発信する人が増え、女性特有の問題が多くの人の目につくようになったため、社会全体で状況を変えていこうと動きはじめたのです。

 
フェムテック・フェムケアの普及で「生理用品の自由な選択肢」が広がっている

生理用品は多様化しており、経血を受け止めるだけのアイテムではなくなっています。女性の健康問題を解決する「フェムテック・フェムケア」の広がりから、生理用品も「生理中も快適に過ごすための相棒」へ進化しているのです。
わずか100年前、多くの女性は生理に縛られてました。しかし、生理用品の発展と変化に伴い、女性の生理との付き合い方や、社会全体の生理への向き合い方も大きく変わろうとしています。
社会における女性の生理への受け止め方は、より自由に、よりオープンになり始めました。近いうちに「生理だから」と我慢したり、恥ずかしがったり、隠したりする時代は、きっと終わりを迎えるでしょう。

  • 中村里歩

    美容×健康ライター中村里歩

    元美容師で「超」がつく美容・健康マニア。試した美容法・健康法は数知れず…。経験を活かし、美意識の高い女性や、健康に悩む男性に寄り添う記事を執筆するべく活動中。
    モットーは「明るく前向きに」「日進月歩」。AIに負けない、読者への愛がたくさん詰まった記事を執筆するため日々勉強中。