管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
熱中症対策に効果的な飲み物を活用すれば、夏の体調管理がしやすくなります。ポイントは、水分だけでなく塩分(電解質)も一緒に補えるかどうか。日本で愛される味噌汁も心強い一品です。シェーカーを振るだけで手作りできる冷製レシピも紹介します。
コンビニでもスポーツドリンク以外に頼れる商品は多くありますが、中には注意が必要な飲料も。常温と冷たい飲料を上手に使い分けながら、暑さに負けない体づくりを目指しましょう。
熱中症対策には、水分と電解質(ナトリウム・カリウムなど)の補給が重要です。人間には、生命を維持するために体温を一定に保つ働きがあります。暑い環境下では体温が上昇するため、汗をかいて熱を体外に逃がし、体温を下げようとするのです。
汗をかくと、水分だけでなく電解質も一緒に体外に流出します。損失分を補わずにいると、汗を出せなくなり、体内に熱がこもるため「熱中症」が発生しやすくなるのです。
とくに高温多湿な環境や運動時は、体内で発生する熱(熱産生)が、外に逃がす熱(熱放散)の量を上回るため、臓器に負担がかかり危険な状態に陥るリスクがあります。
熱中症を防ぐには、こまめな水分補給と同時に電解質もバランスよく補給する心がけが大切です。
熱中症対策には、水分と電解質をバランスよく摂取できる飲み物が適しています。厚生労働省が熱中症対策として推奨する基準(ナトリウムが40~80mg/100ml=食塩相当量として0.1~0.2g)を満たすコンビニでも買える飲み物を3つ厳選してみました。
参照:「職場における熱中症予防対策マニュアル」/厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課一般的なスポーツドリンクは、100mlあたり0.1gの食塩相当量が含まれており、汗とともに失われやすい水分や電解質を効率よく補えます。
とくに大量に汗をかく場面では、厚生労働省もスポーツドリンクや経口補水液の活用を推奨しているのです。
スポーツドリンクは成分濃度により大きく2タイプに分かれ、「アイソトニック飲料(一般的なスポーツドリンク)」と「ハイポトニック飲料」に分類されます。特徴や適した使用タイミングを理解して、上手に使い分けましょう。
糖質や電解質が体液とほぼ同じ濃度で含まれており、エネルギー補給にも役立つスポーツドリンクです。体に必要な水分や糖分・塩分をあらかじめ補給するために、運動や屋外作業前に飲むのが適しています。アイソトニック飲料を約2倍に薄めると、下記に示すハイポトニック飲料のように運動中や運動直後の水分補給にも活用可能です。
電解質濃度が体液よりも低く、糖質も控えめに配合されたスポーツドリンクです。体内への吸収スピードが速いため、運動中や運動直後、汗をかいた後の素早い水分補給に適しています。
しかし、汗を大量にかいた場合は電解質損失量が多いため、ハイポトニック飲料では電解質を十分に補えない可能性も。大量の汗をかいた際は、電解質濃度が高いアイソトニック飲料や経口補水液が適しているでしょう。
一般的な甘酒には、100mlあたり0.2gの食塩相当量が含まれており、汗とともに失われやすい水分や電解質を効率よく補えます。
甘酒は冬のイメージが強いかもしれませんが、じつは夏の季語。電解質や糖質を補給できるため、江戸時代から暑さ対策に役立てられてきた頼もしい飲み物です。「麹の働きで米のでんぷんやタンパク質が分解されており、体に取り込みやすい形になっています。アルコール分を含まないため、小さなお子さまも安心して飲めますよ。
一般的な有塩トマトジュースには、100mlあたり0.3gの食塩相当量が含まれており、汗とともに失われやすい水分や電解質を効率よく補えます。
無塩タイプもありますが、汗で損失している塩分を補給するには、有塩タイプがおすすめです。
水分補給は熱中症対策の基本ですが、飲み物の種類によっては逆効果になるリスクもあります。利尿作用があったり吸収の妨げになったりする成分を含む飲み物は、避けたほうがよいでしょう。また、塩分がほとんど含まれていない飲み物も電解質補給には適していません。
アルコールは利尿作用が強く、摂取すると体内にある水分が体外へ排出されやすくなります。飲んだ量以上に水分を損失する可能性があり、熱中症リスクを高めるため避けた方がよいでしょう。
カフェインを含むコーヒーやエナジードリンクも、利尿作用があります。体内にある水分が体外へ排出されやすくなるため、水分補給の目的には適していません。
糖分が多いジュースは、胃腸に負担をかけ、水分吸収を妨げるリスクがあります。喉の渇きも残りやすく、熱中症対策としては不向きです。
熱中症で脱水が進むと、水分だけでなく電解質(ナトリウム・カリウム)が著しく不足してしまいます。水分と電解質を効率よく補える飲料と言えば、スポーツドリンクも便利ですが、さらに効率よく吸収できる飲料が経口補水液です。特徴や注意点・購入できる場所を確認しましょう。
経口補水液とは、脱水状態にある人のために作られた「特別用途食品(病者用)」です。国の制度で認められており、感染性胃腸炎による下痢や嘔吐・発熱時に失われた水分と電解質を効率よく補給できるよう設計されています。
スポーツドリンクよりも塩分が多く、糖分は控えめで、吸収が早いとされる配合です。脱水時には心強い飲み物ですが、健康な人が日常的に飲むと心臓や血管に負担をかける恐れがあるため、常飲は避けましょう。
経口補水液は、基本的に薬局やドラッグストア・病院にある売店といった、専門家のアドバイスが得られる場で販売されています。「病者用食品」であるため、通常のコンビニでは販売されていません。しかし、薬剤師が常駐する薬局併設型のコンビニでは取り扱いがある場合もあります。
万が一、熱中症になってしまったら、早急に体内にこもった熱を逃がして体温を下げる工夫が重要です。環境省が定めている熱中症環境保健マニュアル2025年7月版では、「冷たい飲み物」で、速やかに水分補給するよう推奨しています。
一方で、吸収効率や体への負担も考慮すると、注意点もあるため確認しておきましょう。
熱中症で体温が上昇している場合は、5~15℃程度のやや冷たい飲み物での水分補給が適しています。冷たい飲み物を飲むと、体の内側から熱を奪うため、効率よく体温を下げられるのです。
ただし、冷たすぎると胃腸の働きを低下させて水分吸収を妨げる可能性もあります。キンキンに冷えた飲み物は避けましょう。
常温の飲み物は、胃腸への負担が少なく、毎日の水分補給に適しています。胃腸機能が低下している方や、冷えを避けたい方におすすめです。常温の飲み物でも熱中症時の水分補給として役割を果たします。しかし、体温を下げる効果は冷たい飲み物のほうが効率的です。
参照:「まもなく夏本番!熱中症を防ぐ正しい水分補給法とは?」/特定非営利活動法人日本成人病予防協会冷たい味噌汁は、塩分(電解質)と水分を同時に補給できる、熱中症対策にぴったりな一品です。作り方も簡単で、食欲がない日や忙しい朝でもすぐに作れます。具材を加えれば、栄養バランスも整いますよ。
他にも、熱中症対策に役立つ手作りの飲み物レシピは、下記で紹介しています。
参考記事:クエン酸入りスポーツドリンクのメリットや適切な濃度は?管理栄養士監修はちみつを使った自作レシピも紹介熱中症を防ぐには、栄養バランスのよい食事や深い眠りで、暑さに負けない体を作る習慣が欠かせません。さらに、寝具の素材や室温を見直し、快適な睡眠環境を整えれば、夜間の熱中症発症リスクも下がります。
汗をかく場面では、水分と電解質の補給が同時にできる飲み物を選び、こまめな水分補給を意識しましょう。毎日の積み重ねが、夏を健やかに乗り切る力につながります。
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