お腹にガスが溜まる原因には、腸内環境の乱れや食事のとり方、食べ物の種類、ストレスなどいくつかの要因があります。セルフケアのポイントは、食事や生活習慣の見直しです。生活習慣の改善に加えて、市販の整腸剤を使うのも一つの方法です。
用法・用量を守って整腸剤を服用しても症状が改善しない場合は、自己判断を避け、なるべく早く医師に相談しましょう。何らかの病気が隠れている可能性もあります。
お腹にガスが溜まるのは、体内で作られるガスと排出されるガスのバランスが崩れるためです。ガスの正体は、口から飲み込む空気と、腸内細菌が食べ物を分解して発生させるガスです。通常、ガスの多くは腸壁から吸収され、一部はゲップやおならとして排出されます。しかし、何らかの原因で排出がうまくいかなくなると、お腹が張って苦しくなったり、ゴロゴロ鳴ったりします。
お腹にガスが溜まるのは、腸内環境の乱れ、食事の摂り方や内容、食べ物の種類などが関係している場合があります。さらに、便秘やストレス、運動不足、ホルモンの影響も考えられます。まずは、日頃の生活を振り返ってみましょう。
腸内細菌は、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割が理想的なバランスです。しかし、悪玉菌が善玉菌より優位になると腸内環境が乱れ、お腹の不調を招きガスが溜まる原因になります。腸内細菌のバランスは、日々の食生活やストレスが理由で乱れることも。
早食いをしたり、一口の量が多かったりすると、知らないうちに空気も一緒に飲み込んでしまいがちです。食事中のおしゃべりも空気を飲み込む原因となります。また、よく噛まないと消化不良を招き、ガスが過剰に発生する場合も。
肉類中心の食生活は悪玉菌を増やす原因となり、ガスが過剰に作られる場合があります。また、腸内で分解される際にガスを多く発生させるのは、芋類や豆類などです。
便秘で腸内に便が長くとどまると、悪玉菌が増えガスが発生しやすくなります。さらに、溜まった便によってガスの通過が妨げられ、排出されにくくなる悪循環に陥るのです。その結果、ガスが腸内に溜まりやすくなります。
ストレスや過度な緊張状態が続くと、自律神経のうち交感神経が優位になります。交感神経は消化管の運動を低下させるため、ガスが溜まる原因に。また、無意識のうちに唾を飲み込む回数が増え、その際に空気も取り込んでしまいます。
日頃から体を動かす習慣がないと、腸の動きが低下。腸のぜん動運動が弱まり、ガスをスムーズに排出できなくなります。そのため、腸内にガスが溜まりやすくなるのです。
ガスが溜まる原因には、女性ホルモンの影響もあげられます。女性ホルモンには卵胞ホルモン（エストロゲン）と黄体ホルモン（プロゲステロン）があり、生理前後はホルモンバランスが変化します。生理前には黄体ホルモン（プロゲステロン）の分泌が増えるため、腸のぜん動運動が低下し、便秘になりやすい状態に。そのため、生理前にお腹が張っていると感じる女性は少なくありません。
お腹にガスが溜まってしまった場合には、自分でもできる対処法があります。食事の摂り方や内容、生活習慣を見直して、腸のぜん動運動を促す対策を。難しい方法ではないので、できる対策から始めてみましょう。
食べ方や内容を見直してみましょう。よく噛まずに食べたり、ガスが出やすい食品ばかりを食べたりしていませんか。腸内環境を整える食品を意識的に取り入れる工夫も大切です。
食事は時間に余裕を持って、ゆっくりとよく噛んで食べましょう。食べ物と一緒に空気を飲み込む量を減らせます。噛む回数は、一口30回程度が目安です。
肉類・芋類・豆類など、ガスが発生しやすい食品は一度に食べ過ぎないように注意してください。一切摂らないのではなく、量を調整して上手に取り入れましょう。
腸内の善玉菌を増やす食事を意識するようにします。ヨーグルトや納豆などの発酵食品や、食物繊維を含む野菜や海藻類をバランスよく日々の食事に取り入れましょう。
お腹にガスが溜まるときには、生活習慣にも気を配りましょう。体を動かすと腸の動きが活発になります。ストレスを上手に発散するほか、お腹を温めたり、マッサージしたりするのもおすすめです。
デスクワークなどで同じ姿勢が続くと、腸の働きが低下しガスが溜まりやすくなります。ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を習慣にしましょう。同じ姿勢が続いたら、体を動かす時間を作ってください。
ストレスで自律神経のバランスが乱れると、腸の動きが低下してガスが溜まる原因になります。ストレスはため込まず、こまめに発散しましょう。音楽を聴く、趣味に没頭する、軽い運動をするなど、自分に合った方法を見つけるのが大切です。
お腹を温めたりマッサージしたりすると、腸のぜん動運動が促されます。ぬるめのお湯にゆっくり浸かる半身浴は、血行をよくして腸の動きを活発にするためおすすめです。マッサージは、お腹全体を優しくなでるようにおこないましょう。
参照：咀嚼回数に関する文献レビュー／新潟大学医歯学総合病院加齢歯科診療室生活習慣の改善を心がけても、お腹の張りが気になる場合もあるでしょう。セルフケアの一環として、市販薬を活用するのも方法の一つです。市販の整腸薬には、善玉菌を増やして腸内環境を整える成分や、お腹の張りを改善する成分、胃腸をサポートする成分などが配合されています。自分に合った製品を選び、セルフケアの一助として取り入れてみてください。
整腸薬を選ぶ際は、含有成分の働きに注目し、自分に合った製品を探しましょう。
納豆菌・乳酸菌・ビフィズス菌といった善玉菌は、乱れた腸内環境を整え、ガスの原因となる悪玉菌の増殖を抑える働きが期待されます。消泡剤（ジメチルポリシロキサン）は、腸内で発生したガスだまりへ直接アタック。また、弱った胃の働きを助ける生薬成分は、消化を助け大腸の負担を軽減します。
ガスが発生しやすい食べ物は、食物繊維の豊富な食べ物です。1回に食べる量を考えるようにしましょう。市販の整腸剤を服用するときには、用法・用量を守るようにします。症状の変化がない場合には、医師や薬剤師への相談が推奨されます。
ガスが発生しやすい食べ物として、芋類や豆類、ごぼうなどの食物繊維が豊富な野菜があげられます。また、炭酸飲料はお腹が張りやすい飲み物の一つです。
中には腸内環境によい食品もあるため、完全に避けるのではなく、一度に摂る量を調整するなどして、バランスを考えて取り入れましょう。
市販の整腸薬を服用する際は、製品に記載されている用法・用量を必ず守ってください。一般的に、乱れた腸内環境が整うには時間がかかるため、2週間程度を目安に服用し、症状の変化を確認しましょう。症状が改善しない場合には、服用を中止して医師や薬剤師に相談してください。
セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、激しい腹痛や急な体重減少といった症状があるときは注意が必要です。背景に何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。自己判断はせず、早めに内科や消化器科を受診して医師に相談してください。
ドラッグストアや精神病院、一般病院に薬剤師として勤務。2022年よりフリーライターとして活動。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター1級。マクロビオティック料理とウォーキングを欠かさない生活を心がけている。
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