看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
妊娠糖尿病になったら、食事療法や運動療法による血糖管理をおこない、目標値を目指すのが大事です。体重増加は適正な範囲で増えるようにしましょう。
食事や運動での血糖コントロールがつかない際は、インスリン注射が導入されます。出産後はインスリンが不要となるケースが多いですが、妊娠糖尿病を発症した人は、将来糖尿病になるリスクもあります。
ママ、赤ちゃんが健やかに過ごせるように、妊娠中も出産後も食事や運動に気をつけてくださいね。
妊娠糖尿病 とは、妊娠中に初めて指摘された糖代謝異常のうち、通常の糖尿病と診断されるほどではない状態を指します。近年、日本では糖尿病全体の患者数の増加や、晩婚化・晩産化といった背景から、妊娠糖尿病の発症例も増加傾向です。
もし全妊婦に対して経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施したと仮定した場合、およそ 12.08% の妊婦が妊娠糖尿病の傾向にあると判定されるとの報告があります。もともと糖尿病の妊婦を加えると、妊婦の約10%前後程度が糖代謝異常の診断です。
妊娠中のママや赤ちゃんの健康リスクを減らすためには、目標値に血糖をコントロールしなければなりません。血糖値だけでなく、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)、GA(グリコアルブミン)の数値も指標となります。HbA1cやGAの目標値は、ママや赤ちゃんの状態によって異なることも理解しておきましょう。
妊娠糖尿病は食事療法と運動療法が基本です。食事療法や運動療法で改善しない場合は、薬物療法(インスリン療法)が導入されます。
血糖コントロールをおこなうために、数値を自分で知るのも効果的です。治療の一環として、血糖自己測定を指示される場合もあります。血糖自己測定は、簡易血糖測定器を用いて自分で測定する方法です。血糖コントロールがうまくいっているかをチェックでき、食事量やインスリン量を判断する手がかりになります。
食事療法では、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維が豊富な食品をとり入れ、ファストフードや甘いお菓子など、血糖値を急上昇させる食品は控えるよう日々の食事献立に気をつけていくのです。医師や管理栄養士による食事指導を受け、より適切な食事管理を生活のなかで続けていきます。
運動療法は、ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で有酸素運動をおこなうことが推奨されます。運動はインスリンの効きをよくし、血糖値を下げる効果が期待できるでしょう。ただし、運動前に医師に相談し、体調に合わせておこなう必要があります。
食事療法や運動療法で血糖コントロールがうまくいかない場合は、飲み薬ではなくインスリン療法がおこなわれます。インスリン療法の方が確実に血糖を下げられ、赤ちゃんへの安全性が確認されている薬剤も多いためです。インスリン導入時は、指導やインスリン量調整のため、入院となる場合もあります。
妊娠糖尿病と診断された人は食事をバランスよくとり、体重が増え過ぎないように注意しましょう(※注意・適切に体重が増えることは重要です)。また、適度に運動するのも、血糖値をコントロールするのに重要になってきます。
どちらも医師や管理栄養士に相談の上で、適切に生活にとり入れる必要があるでしょう。
妊娠糖尿病と診断された場合、赤ちゃんの発育やママの健康に必要なエネルギーや栄養素を適切にとりましょう。適正エネルギー量、食事のポイント、注意すべきソフトドリンクケトーシスについて詳しくみていきます。
妊娠糖尿病の人の必要エネルギー量は、正常な妊婦の30%カット程度が望ましいとされています。必要以上のエネルギー制限は避けなければなりません。
また、血糖コントロールの方法として「分割食」がとり入れられる場合もあります。1日3食の食事を5~6回程度に分けて食べる方法です。1日当たりのエネルギー量は変わりませんが、1回当たりの食事量を減らせるため、食後の血糖値上昇を抑えられます。分割食は奨められる方と、そうでない方がいるため、必ず医師や医療スタッフに相談してください。
ソフトドリンクを飲み過ぎると「ソフトドリンクケトーシス」を引き起こす可能性があり、注意が必要です。ソフトドリンクケトーシスは、糖分を含んだ清涼飲料水を飲み続けることで血糖値が上昇し、ケトン体が血液中に増えた状態をいいます。著しいのどの渇きや倦怠感といった症状があらわれます。
市販のソフトドリンクは、思っている以上に糖分が多いです。たとえばスポーツ飲料では、500mlのペットボトルに約25gの糖分が含まれています。普段の飲み物は、ミネラルウォーターや麦茶を選ぶようにしましょう。
体重増加は、一定の範囲に抑えるようにしましょう。体重増加が少な過ぎてもママと赤ちゃんの健康に影響を及ぼします。適切な体重増加は以下の範囲です。たとえば、体重55kg・身長160cmの場合、BMIは21.48です。体重増加は7~12kgが目標となります。
※BMI:肥満度の指標。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められる。
例)体重55kg・身長160cmの場合:55÷1.6÷1.6=21.48
妊娠中の運動は、血糖値を改善する効果があります。ただし、妊娠の状況や体調によっては運動が向かない場合もあります。必ず医師に相談し、許可を得ておこないましょう。
運動の内容はウォーキングやマタニティヨガ、体操などがおすすめです。食後1~2時間でおこない、食前後の30分は避けてください。
運動中に気分が悪くなる、冷や汗が出るといった症状がみられるときは、血糖の急激な低下の可能性があります。インスリン注射をしている人はとくに低血糖に注意しましょう。ブドウ糖やジュースなどを持ち歩き、低血糖様症状や低血糖に備えてください。
妊娠糖尿病は、適切な治療によって出産後に血糖値が正常になるケースが多いのです。
しかし、出産後3~6カ月の検査で5.4%が糖尿病、全体で25%に糖代謝異常がみられるとの報告があります。
将来、糖尿病になる可能性も高く、妊娠糖尿病にならなかった人と比べるとリスクは約7倍もあります。出産後も定期的に検査を受け、食事や運動に気をつける必要があるのです。
妊娠糖尿病は血糖管理が重要です。血糖値の高い状態が続くとママ・赤ちゃんそれぞれの健康に影響を及ぼすリスクがあります。
食事は栄養バランス、適正エネルギー量を考えてとるようにしてください。
しかし制限し過ぎもよくないため、医師や医療スタッフの指導のもと、食事療法、運動療法をおこないましょう。
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