看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
妊娠糖尿病は、適切な管理や治療によって産後には多くの人が改善する病気です。
しかし中には、妊娠中に上がった数値がなかなか戻らない場合もあります。少数ではありますが、2型糖尿病を発症することもあります。そのため、将来の2型糖尿病の発症リスクに対しても、産前から予防に何をすべきかが重要です。
妊娠糖尿病と診断された場合は、食事療法や運動療法、薬物療法によって血糖コントロールをしなければなりません。放置するとママだけでなく、赤ちゃんの健康リスクも高まるため、定期的に妊婦健診を受け、正しい生活習慣を維持しましょう。
妊娠糖尿病は、出産後に改善するケースがほとんどです。出産で胎盤が排出され、インスリンの働きを抑えるホルモンがなくなるためです。しかし、再発率は高めで、2回目の妊娠では36~70%程度との報告があります。とくに、初回妊娠時に赤ちゃんが4,000g以上であった人やインスリン注射を必要とした人は、再発しやすい傾向です。
また、妊娠糖尿病だった人は、出産後糖尿病にかかる可能性があります。産後3~6カ月の検査で5.4%が糖尿病、全体の25%に糖代謝異常がみられると報告されています。さらに産後5~16年では、17~63%の頻度で糖尿病を発症するとされており、注意しなければなりません。産後も定期的な健診や、規則正しい生活習慣が望まれます。
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめてわかった、糖尿病までにはいたっていない血糖値が高い状態です。そもそも妊娠すると、胎盤から出るホルモンの働きで血糖値を下げるホルモンのインスリンの働きが抑えられ、血糖値が上がりやすくなります。
一方通常の糖尿病は、遺伝的な要因や生活習慣によって、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりして高血糖になる病気です。高血圧症や脂質異常症などと並んで、生活習慣病の1つに位置づけられています。糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、多くが2型糖尿病です。平成28年(2016年)の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人は、約1,000万人と推計されています。
妊娠中の糖代謝異常には、妊娠糖尿病のほかにふたつの分類があります。「妊娠中の明らかな糖尿病」と「糖尿病合併妊娠」です。
妊娠中の明らかな糖尿病は、血液検査等で糖尿病の基準を満たす場合に診断されます。妊娠前に見逃されていた糖尿病、妊娠糖尿病より糖代謝異常が重度の場合、妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれます。糖尿病合併妊娠は、妊娠前から糖尿病と診断されていた人が妊娠した場合です。それぞれの診断基準をみていきましょう。
妊娠糖尿病を放置すると、ママと赤ちゃんの健康リスクが高まる可能性があるので、注意が必要です。
高血糖は自覚症状がないため、定期的に健診を受けましょう。ママと赤ちゃんへの影響をお伝えします。
高血糖が続くと、ママは流産や早産のリスクが高まるほか、帝王切開が必要になるケースが増加する傾向にあります。また、妊娠高血圧症候群や羊水過多を併発するリスクも高まり、膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症にかかりやすくなることも指摘されています。
ママの血糖値が高いと、血液中のブドウ糖はお腹の赤ちゃんに運ばれていきます。すると、赤ちゃんが成長しすぎたり、合併症を引き起こしたりするリスクが高まる場合もあります。将来、肥満やメタボリックシンドローム、耐糖能障害を引き起こす可能性もあり、長期的に注意が必要です。
妊娠糖尿病は二段階の検査で診断されます。すべての妊婦さんを対象にしたスクリーニング検査、スクリーニング陽性者を対象とした診断のための検査です。
妊娠糖尿病のリスクがある妊婦さんを見つけ出すために、全員を対象としたスクリーニング検査が実施されます。検査方法は時期によって異なり、妊娠初期は随時血糖、妊娠中期には随時血糖もしくは「50gグルコースチャレンジテスト」を行います。
50gグルコースチャレンジテストは、ブドウ糖を50g含んだ炭酸水などを飲み、1時間後の血糖値を測定する検査です。スクリーニング陽性と判断される基準を見てみましょう。
いずれかの数値に該当した場合、後日あらためて「75g経口ブドウ糖負荷試験」により確定診断を行います。
2024年の現状として、50gグルコースチャレンジテストは公費負担の対象外となる自治体が多く、妊婦健康診査受診票(補助券)の範囲内である血糖検査のみで済ませるケースが少なくありません。しかし、血糖検査だけでは発見が遅れるリスクも潜んでいます。より確実な検査を希望する場合は、費用面も含めて主治医と相談し、検査内容を検討するとよいでしょう。
妊娠糖尿病の診断のためにおこなわれるのが、75g経口ブドウ糖負荷試験です。空腹時の血糖値と、75gのブドウ糖入りのジュースを飲んで1時間後、2時間後の血糖値を測定します。妊娠糖尿病と診断される基準は以下のとおりです。
妊娠糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。食事や血糖の記録をつけ、主治医や管理栄養士と相談しながら、食事や体重をコントロールしていくのです。
両者でコントロールできないときは、薬物療法(インスリン注射)が導入されます。
食事は摂取エネルギー量を制限しすぎず、バランスよく食べましょう。妊娠中は乳製品・緑黄色野菜・豆類・小魚がおすすめです。
いっぽうで、ジュースやケーキなどの糖分を多く含んだ食品は控えめにするように心がけましょう。
血糖をコントロールするには、食べる時間も重要です。規則正しい時間に食事をし、夜遅くは食べないように心がけていきましょう。
運動は、ウォーキングやマタニティヨガなど全身を使う運動がおすすめです。適した運動は個人差があるので、必ず主治医に相談のうえおこないましょう。
インスリン注射が導入された際は、自分で注射をおこないます。血糖を適切にコントロールでき、高血糖による影響を予防するために効果的です。赤ちゃんへの安全性が確認されているインスリンは、世界でも妊娠中の血糖管理に使用されています。
妊娠糖尿病は、妊娠によって発見される糖代謝異常です。万が一、妊婦健診で発見されても、適切な治療によって出産後には元に戻ります。ママ・赤ちゃんの健康リスクを予防するためには、食事や運動など生活習慣が大事です。主治医や管理栄養士の指導をしっかり守るようにしてくださいね。
妊娠糖尿病の人は、将来糖尿病を発症するリスクが高いとされています。出産して血糖が正常化しても、正しい生活習慣を維持して健康に過ごせるよう日々を過ごしていきましょう。
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