看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
妊娠糖尿病を予防するには、生活習慣を整えるのが大事です。妊娠糖尿病になりやすい体質の人もいますが、妊娠するとホルモンの影響で血糖値は上がりやすくなるため、誰でも発症する可能性があるのです。
食事はバランスよくとり、適正エネルギー量を守りましょう。運動は、血糖値や体重のコントロールに効果が期待できます。体重は、増えすぎだけでなく、増加不足にも注意してください。近年注目されている「プレコンセプションケア」についても、解説していきます。
妊娠糖尿病は「妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病にはいたっていない糖代謝異常である」と定義されています。妊娠をきっかけとして起こる一時的な病気であり、出産後は元の血糖値に戻る人が多いです。
妊娠後はホルモンの影響でインスリンの働きが抑えられ、、血糖値が上がりやすくなります。とくに妊娠中期から後期にかけては高血糖になりやすいとされており、一定の基準を超えると妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠糖尿病は、妊娠によって誰でも起こる可能性があります。
とくに以下に該当する人は、なりやすい体質であるとわかっています。定期的に検査をおこない、注意深くみていく必要があるでしょう。ある報告では、日本における妊娠糖尿病の再発率は47.2~76.4%程度といわれています。
近年、妊娠前からのケアを意味する「プレコンセプションケア」が注目されています。妊娠糖尿病を予防するためにも、知っておくとよい内容です。目的や望ましい健康習慣をみていきましょう。
プレコンセプションケアは、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠可能な年齢の女性に大切なケアとされています。妊娠前に自分の心と体の状態を知り、少しでもよい状態にしておけば、健康な妊娠・出産につながるでしょう。プレコンセプションケアの目的は以下のとおりです。
妊娠を希望する方は、若いうちから健康的な生活への心がけが大切です。
プレコンセプションケアと呼ばれるこの取り組みは、将来的に健康な妊娠・出産に繋がります。バランスの取れた食事や適度な運動、そして定期的な健康チェックは、妊娠糖尿病などのリスクを減らす効果も期待できるでしょう。今からできることから始め、健やかな未来を築きましょう。
妊娠糖尿病を予防するには、望ましい体重を維持し、食事や運動で生活習慣を改善したり、定期的な健診を受けたりなどの対策が大事です。それぞれ詳しく解説します。
お腹の赤ちゃんとママの健康のために、適正な体重にコントロールする必要があります。体重増加が不足すると、赤ちゃんが小さく産まれたり、体重が増えすぎると、赤ちゃんが大きく産まれたりするリスクが高まるためです。赤ちゃんが4,000gを超えて産まれた場合や、在胎週数に対して大きく産まれた場合には、成人後に肥満や糖尿病を発症するリスクも高まります。
妊娠中の体重増加目安は以下のとおりです。ただし、個人差を考慮する必要があるため、妊婦健診で確認しましょう。
※BMIの求め方
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
たとえば身長165cm、体重60kgの場合
60÷1.65÷1.65=22.0
妊娠糖尿病を予防するための食事で重要なのは、栄養バランスやエネルギー量、食べるタイミングです。
食事は主食・主菜・副菜を組み合わせて、バランスよくとりましょう。若い女性は、エネルギー不足や栄養バランスの乱れが起こりやすい傾向です。15~29歳までの女性の脂質エネルギー比率は30%を超え、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度も少ないとのデータもあります。お腹の赤ちゃんの健康に必要な、葉酸を含む緑黄色野菜の摂取量も十分ではありません。妊娠前からの食習慣が重要です。毎食、以下の中から組み合わせるとよいでしょう。不足しやすいカルシウムは、おやつで補うのもおすすめです。
血糖値のコントロールをおこない、ママや赤ちゃんの健康を維持するために、適正なエネルギー量の食事を摂取するのが重要です。妊娠中のエネルギー量を知るには、妊娠前の理想体重を計算するところから始めます。妊娠周期と活動量によっても異なるため、適正なエネルギー量を求める際は、医師や管理栄養士に相談するようにしてください。ママの体格や体重増加の程度、赤ちゃんの発育状況も考慮する必要もあります。
計算方法の例を挙げておきますので、参考にしてみてくださいね。
食事は朝・昼・晩、できるだけ一定の時間で食べるようにしましょう。欠食せずにきちんと食べると、血糖値の急上昇を防げます。血糖値が高い人は、分割食が効果的な場合があります。分割食とは1日の食事を6回に分けて食べる方法で、血糖がコントロールしやすくなるのです。血糖値が高いといわれた人は、医師や管理栄養士に相談のうえおこなってください。
妊娠するとインスリンの抵抗性(効きにくさ)が強まるため、血糖値は高くなりやすいですが、運動によってインスリン抵抗性の改善が期待できます。血糖コントロールや適正体重の維持にもつながるでしょう。
妊娠中は、ママと赤ちゃんの安全を考慮して運動するのが大事です。運動は、妊娠が正常であり、早産や流産の経験がなく、胎児の発育に異常が認められないなどの条件があります。妊娠がわかってから運動を開始するときは、原則妊娠12週以降で妊娠経過に異常がない場合に可能とされています。事前に医師に確認しましょう。
妊娠糖尿病は早期発見が重要です。早い段階で生活習慣を改善できれば、ママと赤ちゃんの健康リスクを抑えられるでしょう。指示されたスケジュールで、必ず受診するようにしてください。
妊娠糖尿病は、ママと赤ちゃんの健康リスクを高める恐れがあります。早産や流産、妊娠高血圧症候群や4,000g以上の巨大児などです。また、赤ちゃんが成人してから、糖尿病や高血圧を発症する可能性もあります。
妊娠糖尿病の予防には、妊娠する前から生活習慣を整えるのも重要です。赤ちゃんを望むカップルや思春期以降の人は、将来を考えて食事や運動、睡眠などの習慣を整えていきましょう。周囲の人も一緒に健康になる意識を持ち、赤ちゃんを迎える準備をしてくださいね。
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