監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
妊娠糖尿病は、妊娠中に一時的な高血糖が生じる病気です。妊娠糖尿病を発症するとママと赤ちゃんの双方にさまざまな危険をもたらす可能性があるのです。
妊娠糖尿病のママは、将来的に2型糖尿病になる可能性が妊娠糖尿病ではないママに比べて高くなると報告されています。
また、次の妊娠でも妊娠糖尿病になるリスクが高く、産後も継続した健康管理が必要です。とくに、産後の運動は産後の2型糖尿病発症リスクを下げる効果があるため、継続したい生活習慣のひとつとなります。
妊娠糖尿病と診断された妊婦さんが注意すべき産後の過ごし方、次の妊娠に向けて準備すべきことについて詳しく見てみましょう。
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される糖代謝の異常(高血糖)で、ママと赤ちゃん双方に多くのリスクをもたらします。
妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響で、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが抑えられることで血糖値が上昇しやすくなります。一定以上の血糖値上昇が認められた場合に妊娠糖尿病と診断されますが、日本でも決して珍しい病気ではありません。まずは、妊娠糖尿病の基本的な知識と産後の注意点を見てみましょう。
妊娠中に初めて血糖値が高くなる状態を妊娠糖尿病といいます。妊娠前から糖尿病と診断されている場合は、妊娠糖尿病とは呼びません。
妊娠糖尿病は、誰にでも起こりうる可能性がありますが、肥満や糖尿病の家族歴、高齢妊娠、巨大児出産経験がある方は、特に注意が必要です。
妊娠糖尿病になると、ママと赤ちゃんに様々なリスクが生じます。
赤ちゃんは、大きすぎる赤ちゃん(巨大児)になりやすくなり、出産時に困難を伴ったり、低血糖や呼吸困難などの症状が現れるリスクが高まります。また、将来、肥満や糖尿病になる可能性も高まることがわかっています。
ママは、高血圧や羊水量の変化など、妊娠中の合併症のリスクが高まります。さらに、出産後に糖尿病を発症するリスクも上昇するため、注意が必要です。
妊娠糖尿病は、母親と赤ちゃんの健康に大きな影響を与える可能性があるため、早期発見と、産前だけでなく産後も引き続き、適切な生活習慣の管理が大切になってくるでしょう。
妊娠糖尿病を発症すると、ママと赤ちゃんの双方にさまざまな危険を及ぼします。なかにはママと赤ちゃんの命に危険をもたらす場合もあるため注意が必要な病気です。ママと赤ちゃんそれぞれにどのような影響があるのでしょうか?
妊娠糖尿病にかかると、赤ちゃんが巨大児(出生体重が4000g以上)となるリスクが高まります。巨大児は出産時に肩甲難産などの分娩時合併症を引き起こすリスクが高まり、さまざまな危険を伴います。また、妊娠糖尿病のママから生まれた赤ちゃんは、出生後の低血糖や呼吸困難などの新生児期の合併症リスクも上昇します 。さらに、将来的に肥満や2型糖尿病を発症するリスクが高まるため注意が必要です。
その他にも、流産が生じやすくなったり、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸などのリスクが高まったりすると報告されています。
妊娠糖尿病と診断されたママは、妊娠高血圧症候群や羊水量の異常などのリスクが高まります。
これに加えて、出産後に2型糖尿病を発症する可能性が大きく増加することも知られています。妊娠糖尿病を経験した女性の17~63%が、産後5~16年以内に2型糖尿病を発症すると報告されているのが現状です。とくに産後における生活習慣の見直しが不十分な場合、このリスクはさらに高まるとされています。
妊娠糖尿病と診断された場合でも、妊娠中に血糖値のコントロールを行えば、産後の血糖値は正常化するケースがほとんどです。しかし、産後も血糖値が下がらず2型糖尿病を発症するママもいます。
そのため、産後は1~3か月を目途に検査を受けて血糖値を確認するのが推奨されます。また、2型糖尿病への移行を防ぐために産後も食生活や運動などの生活習慣改善が必要です。
さらに、妊娠糖尿病と診断されたことがあるママは、次の妊娠時にも妊娠糖尿病を発症しやすいとされています。そのため、産後の血糖値チェックや生活習慣改善は次の妊娠に備える上でも非常に重要です。
妊娠糖尿病と診断されたママにとって、運動習慣は産後も継続すべき生活習慣のひとつです。適度な運動は血糖値を下げる効果があり、2型糖尿病の発症リスクを低くします。さらに、産後の体調回復やメンタルヘルスの改善にも効果が期待できるでしょう。
産後に運動を行うべき理由、おすすめの運動、そして運動を行う際の注意点について詳しく見てみましょう。
妊娠糖尿病と診断されたママは、産後も継続した運動習慣を心がけていきましょう。
適度な運動はインスリンの働きを向上させて血糖値を下げやすくする効果が期待できます。そのため、産後に2型糖尿病を発症するリスクを低められるのです
また、運動は体重管理にも役立ち、妊娠中に増加した体重を減少させる効果もあります。肥満を予防できるのも2型糖尿病への移行を予防するのに有効な理由です。
さらに、運動はメンタルヘルスにもよい影響を与えます。産後うつの予防や軽減に役立ち、ストレスの軽減やリラクゼーション効果が期待できるでしょう。産後はホルモンバランスの変化や育児のストレスにより、精神的な負担が大きくなる時期です。とくに妊娠糖尿病のママは産後うつの発症リスクが高まるとの報告もあります。メンタルヘルスの面でも妊娠糖尿病のママには運動習慣の継続がすすめられるのです。
血糖値のコントロールを改善するには有酸素運動や筋力トレーニングが効果的です。一方で、産後は無理なく継続できる運動を取り入れるのも大切であり、運動のやり方に注意すべきと考えられます。 産後のママでも無理なく継続できる、具体的な運動の例を紹介します。
ウォーキングは、最も手軽で始めやすい運動のひとつです。特別な器具も必要なく、いつでもどこでも行えるため、産後の運動にも最適です。1日30分程度のウォーキングを週に3回程度行うことで、血糖値のコントロールが改善され、心肺機能の向上も期待できます 。
産後外出できるようになったら、体調がよい日は赤ちゃんとお散歩するのがおすすめです。まとまった時間をとるのが難しい場合は、階段を使う、歩いてお買い物に行くなど日常生活の中でできるだけ歩く機会を増やすように工夫してみましょう。
ヨガは、心身のリラクゼーションとストレス軽減に効果的な運動です。とくに妊娠中からヨガを続けていた方は、産後も無理なく続けられるため、体力回復とメンタルヘルスの両面で効果を感じられるでしょう。ヨガは柔軟性を高めて筋力を維持するのにも適しており、血糖値のコントロール改善にも効果があります 。産後のヨガクラスやオンラインクラスを利用するのもひとつの方法です。
筋力トレーニングは、基礎代謝を向上させて血糖値の安定化に役立つ運動です。とくに、自宅で行える簡単なエクササイズ、たとえばスクワットやプランクなどは特別な器具も必要なくスキマ時間に行える上に、短時間で効果が得られます 。産後の体力に応じて、徐々に負荷を増やしながら行うことで、運動習慣を継続できるでしょう。
産後の運動を始める際には、いくつかの注意点があります。まず、産後すぐに過度な運動を行うのは避け、体調や体力に合わせて徐々に運動を取り入れていきましょう。
とくに帝王切開をしたママや、妊娠出産時に合併症があったママは、医師に相談の上、運動を開始するタイミングや内容を決める必要があります。
また運動中に、息切れ、動悸、めまいなどの症状が現れた場合は、すぐに運動を中止してください。中止しても症状が続く場合は、医師への相談が必要です。
一般的には産後1か月を過ぎたら運動できるとされていますが、過度の負荷をかけることは逆効果になる可能性があります。また、産後の回復には個人差があるため、ご自身が運動できると判断できるタイミングで始めるのが重要です。
無理のない範囲で楽しく続けられる運動を選び、心身の健康を維持しましょう。

妊娠糖尿病を発症したことがあるママは、次の妊娠でも妊娠糖尿病を発症するリスクが高くなることがわかっています。発症リスクは非常に高く、前回までの妊娠で妊娠糖尿病ではなかったママに比べて発症率は6倍以上になるとの報告もあります※1)。
そのため、次の妊娠を希望されるママは血糖値の管理や体重コントロールの継続が必須です。次の妊娠に備えて生活習慣を見直し、健康的な食事と運動習慣を継続してください。
次の妊娠までに気をつけるべき生活習慣について詳しく見てみましょう。
次の妊娠に向けて、定期的な運動の継続が大切です。運動はインスリンの働きを高め、体重を適正に保つ効果があります。ウォーキングや軽いジョギング、筋力トレーニングなど、無理なく続けられる運動を習慣化することで、次の妊娠時に妊娠糖尿病を予防する効果が期待できます。
また、健康的な食生活の維持も重要です。妊娠糖尿病と診断されたことがあるママは高カロリーの食事や脂質の多い食事を避け、日頃から適正カロリーで栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
具体的には、野菜や良質なタンパク質を中心とした食事を心がけてください。過度な間食もおすすめできません。
次に妊娠したときはできるだけ早い段階で医師に妊娠糖尿病の既往があると相談し、適切な運動の開始が推奨されます。妊娠初期から無理のない範囲で運動を行うと血糖値の安定や体重管理に効果的です 。とくに、ウォーキングやヨガ、軽い筋力トレーニングは、妊娠中でも安全に行える運動として広く推奨されています。無理のない範囲で運動を開始しましょう。
ただし、運動を行うときは無理をせず、体調に応じて活動量を調整しましょう。また、妊娠中期以降は、お腹や腰に負担をかけるような運動は避け、医師や助産師の指導の下で安全な運動を続けるのが望まれます。
妊娠糖尿病は妊娠中だけでなく産後にも赤ちゃんとママの健康に大きな影響を与える可能性がある病気です。妊娠糖尿病と診断されたママは、産後も継続的に健康管理を行い、将来的な2型糖尿病やその他の健康リスクの発症を予防していく必要があります。とくに産後の運動は血糖コントロールの改善や体重管理につながり、メンタルヘルスの改善効果も期待できるため重要な生活習慣となるのです。
また、妊娠糖尿病を一度発症すると次回以降の妊娠でも発症リスクが高まることがわかっています。次の妊娠を考えているママは、産後も運動習慣を継続し、次回の妊娠初期から適度な運動を継続するよう推奨されています。
産後も定期的な健康チェックを行いながら、無理なく続けられる運動を取り入れ、次の妊娠のために準備をすすめていきましょう。
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