オーバードーズとは?意味を知ろう
オーバードーズ(Overdose:OD)とは、薬を決められた量や回数以上に過剰に摂取してしまう行為です。医師から処方される医療用医薬品だけでなく、ドラッグストアなどで購入できる身近な市販薬でも起こりえます。実際に過剰に服用し救急搬送された人の平均総服用量は、52.0 ± 62.8錠(包)、最大総服用量は470錠(包)。
昨今、とくに10代・20代の若い世代の間で、咳止めや風邪薬といった市販薬によるオーバードーズの増加が指摘されるようになりました。厚生労働省が2021年度におこなった調査では、過去1年間に市販薬を乱用した経験のある高校生が約60人に1人いる結果も出ており、決して他人事ではない問題になっています。
参照:一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について/厚生労働省
参照:医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送人員の調査結果/厚生労働省第「11回医薬品の販売制度に関する検討会」参考資料2
参照:精神科病床を持たない二次救急医療施設の救急外来における向精神薬過量服用患者の臨床的検討/J-stage
参照:薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021/厚生労働省依存症に関する調査研究事業
なぜ?市販薬のオーバードーズが増えている背景
市販薬のオーバードーズが増えている背景には、一人で悩みを抱え込んでしまう心理的な要因や、SNSといった不正確な情報の影響があります。また、市販薬の入手しやすさも要因の一つです。問題を正しく理解し、身近なリスクとして捉えていきましょう。
心理的な要因
若者が抱える孤独感やコミュニケーションの悩みといった心理的な要因が、精神的なつらさにつながるケースがあります。「ストレスや生きづらさから一時的にでも逃れたい」気持ちが、市販薬の過剰摂取につながり、結果的にさらに孤立を深めてしまうようです。
<心理的な要因>
- ・ 親しい友人が少ない
- ・ 悩みを相談できる相手がいない
- ・ 親にも悩みを打ち明けられない
SNSなどの影響
オーバードーズが増えている背景には、インターネットやSNSの普及も影響しています。誰でも簡単にさまざまな情報にアクセスできる一方、SNS上ではオーバードーズに関する個人的な体験談や情報が流されています。中には、危険性を軽視したり、「つらさを和らげる手段」として安直に肯定したりする不適切な情報も。さまざまな情報に触れて、オーバードーズへの心理的な抵抗感が薄れてしまうのかもしれません。
市販薬の入手しやすさ
市販薬は、処方箋がなくてもドラッグストアやインターネットで比較的簡単に購入できます。価格も手頃な製品が多く、入手しやすさがオーバードーズのハードルを下げている一因です。
また、「市販されている薬だから安全だろう」と考える誤った認識(安全神話)から、過剰摂取のリスクを軽く考えてしまう人もいるかもしれません。手軽さが、逆に危険な使用につながるケースがあるのです。
参照:薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021/厚生労働省依存症に関する調査研究事業
参照:薬物使用と生活に関する全国高校生調査2018/厚生労働省依存症に関する調査研究事業
市販薬オーバードーズを続けるとどうなる?心と体への深刻な影響
市販薬オーバードーズは急性中毒症状を起こし、心や体の健康をむしばんでいきます。さらに、依存症を招いてやめられなくなる可能性も。危険性をしっかり理解しましょう。
心と体への健康障害
市販薬も用法・用量を守れば期待された効果を発揮しますが、オーバードーズは体にさまざまな害をもたらします。
急性中毒として起こりうる症状は、吐き気や嘔吐・呼吸困難・意識障害・興奮状態・誤嚥性肺炎・筋肉が壊れる圧挫症候群(クラッシュ症候群)です。また、肝臓などの臓器にダメージを与えたり、繰り返すうちに薬が効きにくくなる「耐性」が形成されたりするケースもあります。
急性中毒症状の入院期間は状況によって大きく異なるため、一概には言えません。しかし、平均3.4±2.7 日(中央値 2.0)とする報告があります。
- <心と体への健康障害>

依存形成のリスクとやめられなくなる仕組み
市販薬の中には、依存性のある成分を含む製品があり、オーバードーズを繰り返すうちに、やめたくてもやめられない「依存症」になる可能性があります。依存症は、本人の意思の弱さによる状態ではなく、薬によって脳機能が変化してしまう病気です。進行すると、感情のコントロールが難しくなったり、記憶力や集中力が低下したりするなど、日常生活に支障をきたします。心身ともにむしばまれ、最悪の場合、命を落とす危険性もあるのです。
依存症に至った場合には専門的な治療が必要となり、回復には長い時間と継続的なケアが必要になります。
参照:急性中毒(特に薬物中毒)/J-stage
参照:医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022 年). 研究 4:救急医療における薬物関連中毒症例に関する実態調査:一般用医薬品を中心に/厚生労働科学研究成果データベース
参照:若年層で増えている市販薬のオーバードーズ (OD) とは?/広島県総務部広報課
オーバードーズに注意が必要な市販薬の成分とは?
オーバードーズにつながりやすいとされる成分は、風邪薬・咳止め・鼻炎薬に含まれる場合が多いようです。購入時には成分表示を確認しましょう。
オーバードーズにつながりやすいとされる成分リスト
オーバードーズにつながりやすいとされる成分には、エフェドリン・コデイン・ジヒドロコデイン・プロモバレリル尿素・プソイドエフェドリン・メチルエフェドリンがあります。
依存性や乱用のリスクから、より安全性の高い成分への代替が進んだ結果、エフェドリン(エフェドリン塩酸塩)を主成分とする医薬品は、医療用を含めても非常に少ないのが現状です。
注意が必要な成分を含む医薬品の例
オーバードーズにつながりやすいとされる成分を含む医薬品の例としては、風邪薬、咳止め、鼻炎薬があげられます。購入時には必ず成分表示を確認しましょう。
- <注意が必要な成分を含む医薬品の例>

参照:とりまとめに向けた追加の議論(濫用等のおそれのある医薬品について)/厚生労働省「第9回 医薬品の販売制度に関する検討会 資料4-1」
薬は正しく使おう:用法用量を守る大切さ
薬はリスクとベネフィットを理解して、正しく使いましょう。症状を一時的に緩和するだけの市販薬を自己判断で増量したり、長期間使い続けるのは避けてください。
医薬品はリスクとベネフィットを理解して使う必要がある
どのような薬にも、症状を和らげる「効果(ベネフィット)」と、望ましくない作用の「副作用(リスク)」があります。薬の説明書に書かれている用法・用量(飲む量や回数)は、十分な効果を得ながら、副作用のリスクをできるだけ抑えるために、科学的なデータに基づいて決められているのです。薬を使う際は薬の添付文書(説明書)をよく読み、「何のために飲むのか」と「どのような副作用が起こる可能性があるか」を理解しましょう。
自己判断での増量・長期連用は絶対に避ける
市販薬の多くは、つらい症状を一時的に和らげるための製品で、長期間使い続けるのを想定していません。「効かないから」「早く治したいから」と自己判断で量を増やしたり、だらだらと飲み続けたりするのは絶対にやめましょう。効果が高まる保証はなく、むしろ副作用のリスクが高まるでしょう。また、本来必要な治療を受ける機会を逃したり、知らず知らずのうちに薬への「依存」が形成されたりする危険性もあります。
参照:くすりは正しく使ってこそくすり!/日本薬剤師会
参照:薬のオーバードーズって何だろう-中高生のみなさんへ/厚生労働省
オーバードーズがやめられない…と感じたら?対処法と相談窓口
オーバードーズがやめられないと感じたら、自分でも状況を整理するのが大切です。また、専門の相談窓口もあるので、一人で抱え込まず相談してみましょう。
自分でできる方法
「やめたいのにやめられない」と感じたら、まずは状況を整理してみましょう。
少し落ち着いて、「なぜオーバードーズしてしまうのか」「どのような場合にしたくなるのか」と自分の心と向き合うのが大切です。そして、オーバードーズ以外の方法で、つらい気持ちを和らげたり、気分転換したりする方法(代替行動)がないか探してみてください。たとえば、音楽を聴く、軽い運動をする、誰かと話すなどから試してみましょう。
オーバードーズの相談窓口
信頼できる家族や友人、学校の先生に相談できれば心強いですが、話しにくい場合もあるでしょう。身近に相談相手がいないときは、専門の相談窓口を利用するのがおすすめです。
窓口では秘密を守りながら、専門家があなたの悩みに耳を傾け、一緒に解決策を考えてくれます。一人で悩まず、勇気を出して相談してみてください。
以下の厚生労働省のページには、オーバードーズについてのわかりやすい動画がありますので、ご覧ください。
関連ページ:くすりのオーバードーズって何だろう(小学生向け)/厚生労働省
関連ページ:くすりのオーバードーズって何だろう(中高生向け)/厚生労働省
<オーバードーズの相談窓口>
- ・ 医療機関: 精神科・心療内科
- ・ 公的機関: 地域の保健所・精神保健福祉センター
- ・ 電話相談: いのちの電話・こころの健康相談統一ダイヤル・#いのちSOS など
参照:一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について/厚生労働省
参照:薬物乱用防止相談窓口一覧/厚生労働省
参照:電話相談/厚生労働省
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