管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
栄養豊富な鶏肉は、犬の手作りごはんに活用しやすい食品です。部位ごとに異なる栄養価やメリットを知り、愛犬の健康ケアに活かしましょう。また、鶏肉の味付けや生食・骨つき肉・アレルギーについての注意点や犬種ごとの適量についても解説します。今日から作れる簡単レシピもふたつ紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
鶏肉は、犬が好む味・比較的安価な点に加えて、栄養面のメリットもあります。鶏肉に含まれるおもな栄養素と特徴をみてみましょう。
鶏肉にはアミノ酸がバランスよく含まれており、体内で効率よく利用される「良質なタンパク質」です。愛犬の皮膚や被毛の健康維持に役立ちます。
ナイアシンは、代謝の調整に必要な栄養素です。愛犬の健康維持と正常な生育に役立ちます。
イミダゾールジペプチドは、鶏肉のうち、とくにむね肉に多く含まれている栄養素です。抗酸化成分として知られ、愛犬の健康維持とイキイキとした動きに役立ちます。
まずは、鶏肉の部位ごとの栄養価の違いを比較してみましょう。
【鶏肉の部位別の栄養価の比較(生)/可食部100gあたり】
※は、タイ産鶏肉(皮の有無は不明)のデータです。
参照:「食品成分データベース」/文部科学省ささみは、高タンパクで、とくに脂質が少ない部位です。ナイアシンやビタミンB6・パントテン酸が多く、ごはんやおやつにも適しています。
鶏むね肉は、高タンパクで脂質が少ない部位です。ナイアシンやビタミンB6・パントテン酸が多く含まれています。また、抗酸化作用により健康維持に役立つイミダゾールジペプチドがとくに多いので、愛犬のイキイキとした動きをサポートします。
タンパク質が多い部位です。ほかの部位と比較して脂質が多く、好む犬は多いですが、カロリー過多になりがちなので、適量を守りましょう。
適切な鶏肉の量は、食生活により変わります。
規定量のドッグフード(総合栄養食)を毎食与えている場合は、ドッグフードのトッピングやおやつとして鶏肉を与えましょう。おやつの目安量は、1日の最適カロリーの2割以内です。
ドッグフード(総合栄養食)は、成長段階に応じた健康を維持するために必要な栄養素がバランスよく含まれているので、プラスして鶏肉を加えるとカロリー過多になります。鶏肉を追加する分はドッグフードの量を減らしましょう。
ドッグフード(総合栄養食)に加えて、副食(おかず)として鶏肉を与える場合は、1日のドッグフード量の1~2割以内で与えましょう。カロリー過多になるので、鶏肉を追加する分は、ドッグフードの量を減らします。
ペット栄養学会誌に掲載されている「イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法」では、必要カロリーの1/4をタンパク質食品で摂るよう推奨しています。犬の必要カロリーは、犬の成長段階や避妊・去勢の有無、体重により決まるのです。一例として、成犬(1~6歳)、避妊・去勢済みの場合で、鶏むね肉の適量の目安をみてみましょう。
参照:イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法超小型犬の1日の必要カロリー目安は、約160~352kcalです。1日に必要なカロリーの1/4を鶏むね肉から摂るとすると、38~84g前後が適量となります。
<超小型犬の犬種>
チワワ・トイプードル・マルチーズ・ヨークシャテリア など
小型犬の1日の必要カロリー目安は、約400~592kcalです。1日に必要なカロリーの1/4を鶏むね肉から摂るとすると、95~141g前後が適量となります。
<小型犬の犬種>
柴犬・ミニチュアダックスフンド・シーズー・パグ・ペキニーズ など
中型犬の1日の必要カロリー目安は、約640~1072kcalです。1日に必要なカロリーの1/4を鶏むね肉から摂るとすると、152~255g前後が適量となります。
<中型犬の犬種>
ブルドッグ・フレンチブルドッグ・ビーグル・ボーダーコーリー など
大型犬の1日の必要カロリー目安は、約1120~2032kcalです。1日に必要なカロリーの1/4を鶏むね肉から摂るとすると、266~484g前後が適量となります。
<大型犬の犬種>
ダルメシアン・レトリーバー・ドーベルマン・ハスキー犬 など
超大型犬の1日の必要カロリー目安は、約2080~3232kcalです。1日に必要なカロリーの1/4を鶏むね肉から摂るとすると、495~770g前後が適量となります。
<超大型犬の犬種>
バーニーズマウンテンドッグ・グレートデーン など
愛犬が健康的においしく鶏肉を食べるために押さえておくべき注意点を5つお伝えします。
では、詳細を見ていきましょう。
犬に鶏肉を生のまま与えてはいけません。昔の犬は、野生で生活していたので生肉を食べていました。一方で、現在の犬は雑食に近い食生活になり、生肉を消化しにくい体の構造をしているのです。
また、生肉にはカンピロバクターやサルモネラ菌・大腸菌といった食中毒菌が付着している可能性があります。食中毒菌を死滅させるには、加熱が有効です。愛犬の健康を守るために、必ず加熱してから与えましょう。
チキンレッグや手羽先といった骨付き肉の場合は、必ず骨を取り除いてから与えましょう。口の中や喉に傷をつけたり、胃腸障害になる恐れがあるので、要注意です。
鶏肉を与えすぎると、以下のリスクがあるので、適量を守りましょう。
鶏肉の与えすぎは、尿路結石の原因になるので、与え過ぎに注意が必要です。とくにささみには、尿路結石の原因となるリンが多く含まれています。また、豊富なタンパク質を分解する際に尿路結石の原因物質であるアンモニアを発生させるのです。すでに尿路結石がある犬の場合は、豚肉・牛肉・羊肉をごはんのトッピングやおやつに与える程度であれば食べさせてもよいでしょう。
子犬に鶏肉を与えてもOKですが、消化器官が未発達なので与えすぎに注意です。量が多いと消化不良を起こし、下痢や嘔吐をする場合があります。食べやすいサイズにカットして、適量を守りましょう。
鶏肉を食べた後に、「皮膚や口の周りを痒がる」「赤みが出ている」「嘔吐」「下痢」といった症状がある場合は、鶏肉アレルギーの可能性があります。すぐに、動物病院に連れていきましょう。
チキンナゲットやから揚げ・鶏つくねといった人間が食べる肉料理を犬に与えてはいけません。塩分が多いうえに、高脂肪なので膵臓の病気を招くリスクがあります。また、肉料理には犬に有害なネギといった禁忌食品が使われている場合もあるので、要注意です。
鶏肉を用いた犬ごはんを作る場合は、「蒸す」「煮る」を基本に、素材の味を活かして調理しましょう。焼き目(焦げ)は、発がん成分として知られているため、焼き料理は控えるのが無難です。さっそく鶏肉を使ったレシピを2つご紹介します。どちらのレシピも余った分は、冷凍保存用袋に入れて平たくしてから冷凍保存しておくと便利です。
野菜に含まれる食物繊維は、人間と同様に犬にとっても必要な成分です。鶏肉にはほとんど含まれていないので、野菜を組み合わせると栄養バランスがよくなります。
焼きのりを加えると、風味がよくなり、ビタミン・ミネラルも補給できます。
鶏肉は、お手頃で料理しやすいので、飼い主のみなさんの食卓によく登場するご家庭もあるでしょう。おいしそうな香りにつられて愛犬が近づいて来ると、ついつい与えたくなりますよね。
しかし、人間と犬は必要な栄養素も体の構造も全く違います。人間と同じ感覚で食べ物を与えると、病気を招いたり、命に危険をもたらす可能性があるので要注意です。愛犬に鶏肉を与える際は、ぜひ今回ご紹介した適量やレシピを参考にしてみてくださいね。
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