看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
高血圧を予防するには、生活習慣の見直しが欠かせません。血圧が高い状態を放置すると、将来的に重大な病気につながるリスクが高まります。とはいえ、何から始めたらよいかわからない方もいるでしょう。食事内容の見直しや、毎日30分程度の運動、6時間以上の睡眠をとるなどの方法からはじめてみてください。ストレスをためずにリラックスするのも重要です。定期的に健康診断を受け、朝晩の血圧測定も習慣にするとよいでしょう。
血圧とは、血液が流れるときの「血管へ加わる力」です。通常は、収縮期(最高)と拡張期(最低)の2つの数値で示されます。会社の健康診断や人間ドックでは必ずチェックされ、家庭用血圧計を使えば自分でも測定可能です。
ただし、診察室血圧と家庭血圧では基準値が異なります。診察室血圧「140/90mmHg以上」、家庭血圧「135/85mmHg」以上の状態が続くと、高血圧と診断されます。血圧は、測定時間や環境、体調によっても変動するため、家庭では毎日決まった時間に測定しましょう。記録を残しておけば、医療機関を受診する際に役立ちます。
血圧が上がっても体調の変化は感じにくく、つい放置してしまいがちです。しかし、高めの血圧が続くと、知らないうちに体に負担がかかり、将来的な健康リスクが高まります。健康診断で生活改善が必要と判定されたら、医師や保健師による保健指導を受けましょう。早めにできる対策をとれば、血圧や日々の健康を保ちやすくなります。
具体的な血圧対策に取り組む前に、まずは生活習慣や体の状態を振り返り、健康診断の結果を見直してみましょう。改善ポイントが明確になれば、自分に合った対策方法を選びやすくなります。
食事や運動、睡眠、ストレスなど、血圧に影響を与える要素はさまざまです。生活の中で乱れやすい点をリストアップし、何から改善するか優先順位をつけましょう。朝晩の血圧値だけでなく、食事内容を記録するのもおすすめです。紙に書き出してみると、自分が思っている以上に塩分やカロリーを摂取しているのがわかる場合もあります。最近は簡単に食事や運動の記録ができるアプリもあるので、活用してみるとよいでしょう。
食事や運動、生活習慣の見直しなど、血圧対策の方法は複数ありますが、一気にすべてを変えるのは大変です。まずは取り入れやすい方法から始めてみましょう。例えば、かけ醤油をやめて、つけ醤油にするなど、ちょっとした工夫でも問題ありません。継続するのが大切です。
血圧対策のための食事は、塩分控えめが基本です。あわせて、野菜や果物を積極的に取り入れ、アルコールは適量を守りましょう。日頃からの心がけが大切です。
塩分は体にとって重要な成分です。しかし、塩分を摂り過ぎると、血液中のナトリウム濃度は上昇。血液中のナトリウム濃度を下げようとして、体内の水分は血液に移行し、血液量が増えて、血圧が上昇してしまいます。塩分の摂り過ぎで喉が渇くのは、こうした理由です。
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日のナトリウムの食事摂取基準(食塩相当量)の目安量を「男性7.5g未満・女性6.5g未満」としています。ただし、血圧が高めの方は、「1日6g未満」を目安にしましょう。以下のポイントを押さえると、減塩しやすくなります。
参照:
1)日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書/厚生労働省
2)健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~「高血圧」/厚生労働省
カリウムを含む食べ物には、体内の余分なナトリウムを排出する働きがあります。野菜や果物、きのこ、海藻を積極的に取り入れましょう。具だくさんの味噌汁や野菜スープにすると、栄養を逃さず効率的に摂取できます。
お酒は「百薬の長」ともいわれますが、飲み過ぎには注意が必要です。長期間にわたって多量に摂取すると、血圧が上がりやすくなります。節度ある飲酒の目安は、1日あたり純アルコールで「20g」以下。女性は男性よりも少なめが適量とされています。週2日程度は休肝日を設けるのも大切です。
血圧対策で重要なのは、無理なく続けられる食事の工夫です。料理が苦手な方でも簡単に作れる減塩レシピを2品ご紹介します。どちらも塩分を控えつつ、血圧管理に役立つ成分のカリウムやGABAを含むレシピです。
ブロッコリーはカリウムを含み、塩分(ナトリウム)の排出を助ける働きが知られています。茹でずに焼くためカリウムが逃げにくく、香ばしさや歯ごたえも楽しめます。
トマトには、リコピンやカリウムなどのほか、GABAが含まれており、血圧が高めの方の血圧を下げる機能があると報告されています。ホットで飲むと栄養を摂りやすくなりますので、ぜひ試してみてください。
健康的な血圧を保つには、日常的な運動が欠かせません。肥満は血圧上昇との関連性も示唆されているため、運動習慣を身につけ、体重を適正に保ちましょう。
定期的な運動は、体にさまざまなよい影響をもたらします。有酸素運動によって血圧が低下したとの報告もあるため、習慣化したいですね。
おすすめは、息が上がる程度の早歩きやジョギング、筋トレやストレッチです。可能であれば、毎日30分程度行いましょう。時間の確保が難しい方は、1回10分以上を目安にしてください。合計で1日40分程度行うとよいでしょう。
過剰な体重増加は、血圧を上げる要因になります。食事の工夫とあわせて運動を取り入れ、適正体重を維持しましょう。BMIは25未満を目標にしてみてください。BMIは、身長と体重から算出される体格指数で、以下の計算式で求められます。「18.5~25未満」が標準値の範囲です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
健康的な血圧を保つには、食事や運動だけでなく、日常生活の工夫も大切です。ストレスをためない、睡眠を適切にとる、定期健診を受けるなど、意識したい5つの習慣について解説します。
過度な緊張やストレスは、血圧の変動を引き起こす要因になります。ストレスを感じたら、深呼吸や散歩で気分をほぐしましょう。好きな音楽を楽しんだり、歌ったりすると、気分がすっきりします。自分に合ったリラックス方法を取り入れましょう。
睡眠不足によって、自律神経のバランスが乱れると、血圧の上昇を招く可能性があります。毎日同じ時間に寝起きするよう心がけましょう。睡眠時間の目安は6~8時間ですが、適切な睡眠時間には個人差があります。自分に合った睡眠時間を見つけてください。
起床後は朝日を浴びるようにし、寝る前はパソコンやスマートフォンの使用を控えましょう。
冬場など寒くなる時期は、温度差に注意が必要です。急激な温度変化は、血圧の変動を大きくします。入浴時は脱衣所や浴室を事前に暖めたり、外出時には衣類を調整したりして、体を冷やさないように工夫しましょう。WHOの住宅ガイドラインでは、冬の室温は18℃以上を目安としています。
参照:健康づくりのための睡眠ガイド2023/厚生労働省血圧や全身の健康状態を知るには、定期的な健診が欠かせません。過去の検査結果と比較すれば、注意すべき点がわかります。医師や保健師の指導も受けられるので、心配な点があれば相談しましょう。
血圧が高めと指摘されている方は、毎日の血圧測定を習慣にしましょう。朝起きてすぐと夜寝る前の、1日2回の測定がおすすめです。習慣化すると、自分の変化に気づきやすくなります。記録を残しておくと、医療機関を受診する際にも役立つでしょう。
高血圧対策は、食事・運動・生活習慣のすべてをバランスよく整えるのが大切です。とくに塩分の摂り過ぎは血圧上昇の大きな要因となるため、減塩を意識しましょう。あわせて、カリウムやGABAなどの栄養素を含む食事は、血圧が高めの方に適しています。
ストレスをため込まず、適度に発散するのも大切です。家族や友人と楽しく過ごす時間を持てば、心身のリラックスにつながります。健康を保ち、自分と家族の未来を守るために、今日からできる対策を始めてみてくださいね。
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