監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
血圧の正常値を知っていますか?40代、50代になると生活習慣病予防を目的とした特定健診などで「血圧が高い」と指摘を受ける人が増えていきます。
なぜ、40歳を過ぎると血圧は高くなりやすいのでしょう。原因や正常値、年代・男女別の平均値や血圧が高い場合の対処法についてご紹介します。あわせて、家庭での正しい血圧の測り方についてもお伝えしますので、健康的な血圧を維持するのにお役立てください。
40歳を過ぎると、老化により血管が硬くなり、男女ともに血圧は上昇しやすくなります。さらに、男性・女性に特有の原因もあります。
女性の体は、若いうちは血管の老化を防ぐ働きをする女性ホルモンのエストロゲンに守られています。そのため、老化の進行は男性より少し遅くなります。ところが、40代・50代に入り更年期を迎えると、エストロゲンが減少して血管が硬くなるため高血圧になりやすいのです。
高血圧には、二次性高血圧と本態性高血圧の2種類があります。二次性高血圧を引き起こす主な原因は、ホルモン分泌異常や血管に異常を引き起こす病気などで、睡眠時無呼吸症候群による場合もあります。一方、本態性高血圧の主な原因は、運動不足やストレス・過度の飲酒や喫煙・塩分の過剰摂取、過度なカロリー摂取といった若い頃からの悪い生活習慣です。遺伝的体質が関係している場合もあります。
日本人は塩分を摂り過ぎる傾向があり、約90%が本態性高血圧に該当すると言われています。とくに男性の場合は内臓肥満が多く、糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病を伴う「メタボリックシンドローム」が女性よりも多いので、早めの対処が必要です。
血圧の基準値は、年代や性別に関係なく一定です。また、自宅で測る(家庭血圧)よりも、病院で測る(診察室血圧)方が緊張などのストレスがかかりやすいので、数値は高くなる傾向があります。そのため、家庭血圧は、診察室血圧よりも低い基準値を目安にします。
血圧は、食事や運動、ストレスなどの影響によって値が変動するので、たまたま測ったときの値が高血圧に当てはまったとしても、高血圧とは限りません。
血圧の平均値は、年代や性別、血圧を下げる薬を飲んでいるかどうかによって変わります。
血圧を下げる薬の服用者も含めて男女ともに40代から血圧が上昇する方が増え始め、50~60代にかけて高血圧と診断される方が増えていきます。
高値血圧は高血圧ではありませんが、正常血圧と比べると体調に影響を及ぼしやすくなるので注意が必要です。
健康診断で血圧が高いと言われたら、生活習慣の改善が必要です。
血圧を下げるためのポイントをご紹介します。
血圧を正常値に保つのに欠かせないのが、減塩に配慮した食生活です。以下の減塩のコツを参考に、食事を見直してみてください。
1日の塩分摂取量の目安は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満ですが、血圧が高い場合には6g未満です。たとえば、ラーメンの汁を全部飲むと6g近くの塩分摂取になります。日頃、私たちは想像以上に多くの塩分を摂っているのです。とくに外食が多い方は、塩分を過剰摂取している可能性が高いので、食事の摂り方に工夫しましょう。
少しきついと感じる程度のウォーキングやランニングといった有酸素運動を、できれば毎日行いましょう。30分以上、もしくは1回に10分以上継続し、合計で1日40分以上行うのが理想です。運動習慣のない方は無理せずに、軽めの運動からスタートしてみてください。運動時間がとれない場合には、階段を使う・帰宅時に1駅分歩く・掃除や片付けをする…といった日常生活の中で、活動時間を増やすように心がけましょう。
出典:高血圧症を改善するための運動/e-ヘルスネット 厚生労働省血圧の高い原因が肥満の場合には、まず体重を減らしましょう。1kg体重が減ると血圧は約1.7~2mmHg低下すると言われています。ただし、急激な減量は体に負担がかかるので、食生活の改善や適度な運動を取り入れながら、無理のないように体重を落としていきましょう。
喫煙は、血管を収縮させて血圧を上昇させるうえに、血液の流れを滞らせるので動脈硬化につながります。また、過度の飲酒も血圧を上昇させる原因になります。1日の飲酒量の目安は、純アルコールで20g程度です。
以下のお酒の種類による適量を参考にして、摂取量を調整しましょう。
朝目覚めたときから、血圧は上昇しはじめます。日中は高くなり、夜間や睡眠中は低くなるのが一般的です。運動・入浴・ストレスなど、日常生活や精神状態によっても変動し、寒さの影響も受けるので、冬の方が夏よりも高くなります。
血圧は状況や環境によって変動しやすいので、「測定の条件を一定にする」「継続的に測る」を心がけて、できるだけ正確な数値を得られるようにしましょう。
歩いたり動いたりした後は、血圧は上昇している場合があります。そのため、座って1~2分間安静にしてから測定してください。血圧計は、手首に巻くタイプよりも上腕に巻くタイプの方が、正確な値が測れます。上腕式の場合は、カフ(腕帯)を心臓と同じ高さにそろえ、手のひらを上に向けて椅子に座りましょう。状況によっては、仰向けに寝ながらの測定でも大丈夫です。
測定する時間を決めましょう。朝は「起床後1時間以内」「排尿後」「食前」「薬の服用前」、夜は「就寝前」が測定するのによいタイミングです。基本的には朝と夜の1日2回測定を行い、平均値を計測します。また、仕事中やストレスを感じているときなど、不調時にも測定して、血圧が良好な状態にあるかをチェックしましょう。
測定した値は記録に残しましょう。できるだけ長期間に渡って記録をとり続けると、血圧の推移を把握でき、医療機関を受診する際に役立ちます。
血圧は、高くなってもほとんど自覚症状がありません。しかし、血圧が高い状態を長い間放置すると心臓や血管に負担がかかってしまい、健康状態が悪化する恐れがあります。
血圧は、自分の健康状態を教えてくれるバロメーターです。定期的に血圧を測定して自分の数値を把握し、日頃から食塩やお酒の過剰摂取、喫煙といった生活習慣を見直してください。血圧が高めの人に向けた機能性食品も役立てながら、無理のない血圧対策をして、健康を維持してくださいね。
血圧が高い状態が続くと、血管にダメージが加わって知らない内に動脈硬化が進行します。動脈硬化になった血管は内側が狭くなって血流が悪化するだけでなく、柔軟性が失われることで血圧が上昇したタイミングなどで破れてしまうことも。心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気の引き金となります。
高血圧の怖いところは、発症しても目立った自覚症状が現れにくいことです。定期的に血圧を測って把握しなければ血圧が高い状態か知ることはできません。
高血圧は20代の人でも発症するため、定期的な健康診断を受けて血圧の状態をチェックするようにしましょう。
高血圧を予防するには、生活習慣を改善することが大切です。しかし、高血圧は遺伝的な要因が引き金になることも多く、中には他の病気によって引き起こされる二次性高血圧の場合もあります。
生活習慣に自信がある方でも油断は禁物です。健診は必ず受けて下さい。
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