医療ライター・薬剤師藤野紗衣
ドラッグストアや精神病院、一般病院に薬剤師として勤務。2022年よりフリーライターとして活動。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター1級。マクロビオティック料理とウォーキングを欠かさない生活を心がけている。
便秘を和らげるためには、原因を知るのが大切です。腸内環境を整え、自然な便通をサポートするためには、「水」「食物繊維」「オリーブオイル」といった食べ物や飲み物を意識的に取り入れましょう。
便秘のなかには、回数は保たれていても強くいきまないと出ない、時間がかかるといった排便困難型があり、便秘に悩む人の2~3割を占めると言われています。食事だけでなく、生活習慣全体の見直しも意識しましょう。
便秘とは、単に排便回数が少ない状態だけではありません。医学的には「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を指します。具体的には排便の回数が減る以外に、便が硬くて出しにくい、強くいきまないと出ない、排便後も便が残っている感じがする(残便感)といった症状も含まれます。
ただし、食事量が少なければ便の量も減るため、回数が少なくても必ずしも便秘とは言えません。便秘のつらい症状が続き、日常生活に支障が出ている状態を「便秘症」と診断します。
便秘を和らげたいなら、原因を知るのが改善への近道です。便秘は、主に生活習慣が関わる常習性便秘と、糖尿病や大腸腫瘍といった病気が原因となる二次性(器質性)便秘に分けられます。
食生活・ストレス・運動不足といった生活習慣が原因で起こる便秘です。「一過性便秘」「弛緩性便秘」「直腸性便秘」「けいれん性便秘」の4種類に分けられます。
便秘に悩む人の多くが常習性便秘にあたり、原因に合わせた生活習慣の見直しによって、症状を和らげるのが可能です。
大腸がんや腸閉塞といった大腸の病気のほか、他の臓器疾患や服用している薬の副作用が原因で便秘が引き起こされる場合もあります。原因となっている病気の治療が最優先ですが、腹痛や吐き気が伴うといった急性の症状がある場合には、自己判断せず、速やかに消化器内科などの医療機関を受診してください。
腸内環境を整え、自然な便通を促すためには、日々の食事が非常に重要。とくに意識して摂りたいのは、「水」「食物繊維」「オリーブオイル」の3つです。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があるため、どちらか一方に偏らず、バランスよく摂取するようにしましょう。
健康な便の約80%は水分です。体内の水分が不足すると、腸内で便の水分が吸収されすぎて硬くなり、排出しにくくなってしまいます。一度に飲むのではなく、コップ1杯の量をこまめに飲みましょう。ただし水分といっても、カフェインを含むコーヒーや緑茶には利尿作用があります。水分補給は水や麦茶、白湯などにしましょう。
食物繊維は、便の量を増やして排便を促し、善玉菌のエサとなって腸内環境を整える重要な栄養素です。成人1日あたりの摂取目標量は男性20~22g、女性17~18g以上とされていますが、多くの人が不足しがちです。また、食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。片方だけを摂取しないよう、食材を意識的に変えてみてください。
適度な油分は、便の通過をサポートする潤滑油のような役割を果たします。とくにオリーブオイルに含まれるオレイン酸は、小腸で吸収されにくく大腸まで届きやすい性質があるため、積極的に摂取したい成分です。
普段の炒め物に使ったり、サラダ・スープ・味噌汁に垂らしたり、パンに塗ったりして、1日に小さじ2~3杯を目安に積極的に摂り入れてみましょう。
食事とあわせて生活習慣全体を見直すと、便秘になりにくい体づくりを目指せます。「の」の字マッサージ・お尻の筋肉を動かす運動・便秘によいツボといった簡単な方法を知っていると、すき間時間も便通を良好に保つ工夫に繋がるでしょう。
1日3食をなるべく決まった時間に摂るのは、生活リズムを整える基本です。食事の時間が整うと、体のリズムを司る自律神経も整いやすくなり、腸のぜん動運動も活発になります。とくに朝食は重要です。忙しくても、バナナ1本でも食べる習慣をつけましょう。
体を動かすと、血行が促進され、腸の動きも活発になります。激しい運動である必要はなく、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチといった有酸素運動がおすすめです。
腹筋を鍛えると、排便時にいきむ力(腹圧)が高まります。運動は気分転換やストレスの解消にも役立つので、積極的にしましょう。
大腸の動きを活発にすると便が排出されるため、「の」の字マッサージやお尻の筋肉を動かす運動をしてみましょう。食事以外で便を出しやすくする簡単な方法を知っておくと、役立ちます。やり方を確認して、ぜひ今日から試してみませんか。
お腹の張りを感じるときにおすすめの、簡単なマッサージです。仰向けに寝て膝を軽く曲げ、リラックスした状態で行います。おへそを中心に、両手の指先をそろえて、ひらがなの「の」の字を描くように、時計回りにゆっくりと圧をかけながらマッサージしましょう。大腸の走行に沿った動きのため、便の移動を助け、腸のぜん動運動を優しく促します。
骨盤周りの筋肉を動かし、腸を刺激する簡単なエクササイズです。仰向けに寝て、両膝を肩幅に開いて曲げましょう。息を吐きながら、「1、2、3」と数えてゆっくりお尻を持ち上げ、肩から膝までが一直線になるようにします。次に、息を吸いながら「1、2、3」でゆっくりお尻を下げましょう。回数は10回。頭と肩が床から離れないようにするのがポイントです。
ツボ押しは、自律神経を整え、腸の働きをサポートする手軽なセルフケアです。リラックスした状態で行いましょう。「気持ちいい」と感じる程度の強さで、ゆっくり息を吐きながら6秒ほど押し、ゆっくり離すのがコツです。ただし、食後すぐや飲酒後、体調が優れないときは避けましょう。
日々のちょっとした心がけが、快腸への大きな一歩になります。まず、朝はもっとも便意が起こりやすいゴールデンタイムです。少し早起きして、朝食後に必ずトイレに行く習慣をつけましょう。また、日中に便意を感じたら、仕事中であっても我慢しないのが大切です。
出口で便が詰まってしまい、いきんでもなかなか出てこないときには、便座で「考える人ポーズ」をとってみましょう。便の通り道である直腸と肛門の角度がまっすぐになり、便がスムーズに通過しやすくなります。
そのほか、ストレスをためない、無理なダイエットを避けるといった事項に意識しましょう。
食事からの食物繊維やビタミン摂取が十分に難しい場合は、サプリメントで補うのも一案です。ただし、サプリメントはあくまでも食事の補助として活用する製品。頼りすぎず、基本は日々の食事や生活習慣を整えるようにしましょう。
セルフケアをいろいろ試しても、便秘が続いてしまう場合は、市販の「整腸剤」を試してみてください。整腸剤は、ビフィズス菌・乳酸菌・納豆菌といった善玉菌を腸に補給して、乱れた腸内細菌のバランスを整えてくれるでしょう。腸内環境が善玉菌優位の状態に保たれ、腸本来の働きを支えます。急激な作用のある下剤とは異なり、お腹に優しく働くのが特徴です。
慢性的な便秘症は、大きく2つのタイプに分けられます。一つは、1週間の排便回数が3回未満といった排便回数減少型。もう一つは、排便回数は保たれているけれども、強くいきまないと出ない・時間がかかる・残便感があるといった排便困難型です。便秘に悩む方のうち、排便困難型は2~3割を占めると言われています。
厚生労働省における2022年の調査によると、日本人の35.9%が便秘の自覚症状を持っており、とくに65歳以上では71.2%に上るなど、便秘は非常に身近な悩みです。日々の生活から少しずつ見直しをしていき、健やかな腸を目指しましょう。
参照:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況/厚生労働省
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