医療ライター・薬剤師藤野紗衣
ドラッグストアや精神病院、一般病院に薬剤師として勤務。2022年よりフリーライターとして活動。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター1級。マクロビオティック料理とウォーキングを欠かさない生活を心がけている。
健康な毎日のためには、腸内にすむ「善玉菌」を優位に保つ食生活が大切です。善玉菌を増やす食べ物には、善玉菌を含む「プロバイオティクス」や、エサになる「プレバイオティクス」の他に、プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂る「シンバイオティクス」があります。毎日の食事に、身近な発酵食品・野菜・果物を取り入れるようにしましょう。腸活には、生菌で腸を整える医薬品の活用も一つの手段になります。
善玉菌が十分だと便は適度な硬さのため、観察して腸内環境の様子をチェックしましょう。
私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しており、細菌の様子はお花畑にも例えられます。健康を維持するためには、腸内環境のバランスを整える意識が大切です。
腸内環境の理想的なバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれています。善玉菌が悪玉菌より優勢なとき、最も数が多い日和見菌はおとなしくしている状態です。腸内細菌がそれぞれの役目をしっかり果たせるよう、腸内環境のバランスを保つのが健康維持の基本になります。
善玉菌は、主に私たちの健康によい影響を与える細菌です。食べ物の成分から酢酸といった短鎖脂肪酸を作り出し、腸のぜん動運動を活発にするなど、お腹の調子を整える大切な働きを担います。また、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑える役割や、ビタミンを合成する能力を持つ菌も存在するのです。
悪玉菌は、必ずしも不要な細菌ではありません。悪玉菌の働きの一つにあるのが、タンパク質を分解して便として排出する役割です。しかし、増えすぎると腸内の腐敗を進め、アンモニアや硫化水素といった毒性のある物質や、発がん性物質の一因となる可能性があるといわれています。便通異常や免疫機能に影響を与える場合など、さまざまな体の不調を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
日和見菌は、腸内環境のバランスによって働きが変わる特徴的な細菌。善玉菌が優勢な環境では善玉菌の働きを助けますが、悪玉菌が増えて優勢になると、悪玉菌と同じように体によくない働きを始めます。腸内環境の鍵を握る存在といえるでしょう。
善玉菌を増やすと、善玉菌が作り出す酸によって腸内が弱酸性に傾きます。悪玉菌は酸性の環境が苦手なため、増殖が抑制されるのです。結果として悪玉菌の活動が抑えられ、腸内は善玉菌優位な状態に。便の状態が整い、毎日の快適さに役立ちます。健康な体作りのためには、善玉菌を優位に保つ意識が欠かせません。
腸内の善玉菌を優位に保つには、食事からのアプローチが欠かせません。代表的な方法が「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」。善玉菌を直接摂る方法と、腸内で善玉菌を育てる方法です。
プロバイオティクスは、体によい影響をもたらす生きた微生物、または生きた微生物を含む食品です。代表的な菌は、乳酸菌やビフィズス菌。ヨーグルトや納豆などの発酵食品から摂取できます。外から善玉菌を補給し、腸内環境のバランスをサポートする考え方です。
プレバイオティクスは、腸内にすむ善玉菌の栄養源(エサ)になる食品。消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌の増殖を助けます。代表的な成分はオリゴ糖や食物繊維です。野菜・果物・豆類などに多く含まれており、善玉菌を育てるアプローチといえます。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせて摂るのが「シンバイオティクス」です。善玉菌の補給と育成を同時にでき、より効率的です。たとえば、ヨーグルト(プロバイオティクス)にバナナ(プレバイオティクス)を加える組み合わせは、手軽に実践できる健康習慣。サプリメントや飲料といった市販の製品も活用できます。
腸内環境のバランスを整えるには、まず、乳酸菌やビフィズス菌といった食品を直接摂る方法を考えましょう。取り入れやすいのは身近な発酵食品です。伝統的な日本食にある納豆や味噌といった、身近な発酵食品が該当します。スーパーなどで手軽に購入でき、日々の食卓に取り入れやすい食品ばかりです。ぜひ参考にしてください。
手軽にプロバイオティクスを摂取できる代表的な食品、ヨーグルト。含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、腸内環境を整える働きが期待できます。製品によって含まれる菌の種類もさまざまです。試しながら、食生活に取り入れやすいお気に入りを見つけてみましょう。
日本の食卓に欠かせない納豆も、強力なプロバイオティクス食品です。納豆菌は生命力が強く、生きたまま腸に届きやすい特徴があります。善玉菌のサポートや腸内環境を整える働きが期待でき、発酵食品でありながら、食物繊維が豊富な点も魅力です。
おつまみやおやつにもなるチーズには、乳酸菌が含まれています。とくに、加熱処理されていないナチュラルチーズを選びましょう。ゴーダチーズやチェダーチーズなどが代表的です。日々の食事に手軽に取り入れられ、腸内環境を整える一助になります。
日本の伝統的な発酵調味料である味噌は、菌とエサの両方を含むシンバイオティクス食材です。麹菌や乳酸菌に加え、善玉菌のエサになる成分も含まれます。毎日の味噌汁で、効率的に腸内環境をサポート。健康的な食生活に欠かせない一品です。
発酵食品であるキムチには、植物性の乳酸菌が豊富に含まれます。白菜などの野菜が原料のため、善玉菌のエサになる食物繊維も同時に摂取可能。まさにシンバイオティクスな食品です。ただし塩分や刺激が強い場合もあるため、食べ過ぎには注意しましょう。
外から善玉菌を補うのとあわせて、腸内にもとからいる善玉菌を育てる視点も大切です。善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を含む、身近な野菜や果物を毎日の食卓にプラスし、腸内にすむ善玉菌を元気に育てましょう。
ごぼうは、オリゴ糖と食物繊維を豊富に含んでいます。オリゴ糖は消化されずに大腸まで届き、善玉菌のよいエサになります。食物繊維は便のカサを増やし、スムーズなお通じをサポート。まさに腸内環境を整えるのに適した根菜です。
さまざまな料理に活躍する玉ねぎは、オリゴ糖を含んでいます。加えて、腸内環境のバランスを整える働きが期待されているポリフェノールの一種「ケルセチン」も含有。毎日の料理に幅広く使える便利な野菜です。
参照:ポリフェノールの機能性の分子メカニズム~ポリフェノールはどのようにして機能性を発揮するのか~/J-stage手軽に食べられるバナナには、善玉菌のエサになるオリゴ糖が含まれます。朝食やおやつに一本加えるだけで、腸内環境の改善に役立つ食材です。
わかめや昆布といった海藻類は、食物繊維の宝庫です。味噌汁の具や海藻サラダ、酢の物など、手軽な料理で毎日摂取しやすいのも魅力です。
きのこ類は、不溶性食物繊維が豊富です。価格が安定しており、一年を通して手に入りやすいのも長所でしょう。種類が多いため、炒め物・汁物・和え物など、飽きずにさまざまな料理で楽しめます。食事の満足感を高めながら、腸活ができる優れた食材です。
参照:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 炭水化物成分表編・第2章本表別表1/文部科学省腸内の悪玉菌が増える原因は、食事だけではありません。生活習慣の乱れや加齢も関係しています。悪玉菌が増えていないかを知るには、便を観察してみましょう。
高脂肪・高タンパクな食事や、加工食品・インスタント食品の多い食生活は、悪玉菌を増やす原因の一つです。腸内で悪玉菌が増えていないか、排便後に便を観察するのも一つの方法。善玉菌が優位であれば、適度な硬さの便になります。逆に、悪玉菌が増えると便の状態が乱れがちです。
タンパク質や脂質の多い食事、お酒の飲みすぎは悪玉菌を増やす原因になりがちです。とくに、脂質が多い傾向にあるファストフード中心の食生活は要注意。また、ボディメイクのための過度なタンパク質摂取も、腸内環境の面からは好ましくない場合があります。
加工食品やインスタント食品は、脂肪分や糖分が多く食物繊維が少ない傾向にあります。また、防腐剤・着色料・調味料といった食品添加物が含まれている場合、腸内環境を乱し悪玉菌を増やす可能性も。手軽で便利ですが、頼りすぎないよう気をつけましょう。
悪玉菌が増える原因は食事だけではありません。ストレスや睡眠不足といった生活習慣の乱れ、さらには加齢も影響します。加齢は避けられませんが、日々の食事や生活習慣を工夫し、悪玉菌が増えすぎないようにする努力はできます。
毎日忙しく、食事だけで腸内環境を整えるのが難しいと感じる日もあるかもしれません。食事に手を掛けられない日には、市販の製品で食生活をサポートするのも一つの手段です。
乳酸菌・ビフィズス菌などを含むサプリメントも市販されています。形状や飲み方もさまざま。自分のライフスタイルにあわせて、続けやすい製品を選ぶのが大切です。
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