監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
日本人の約4 人に1人が悩んでいるといわれる頭痛。原因は、ストレス・疲労・睡眠不足など多岐にわたります。一時的で軽い頭痛はよくみられる症状ですが、日常生活に影響が出るほど慢性的に繰り返されるケースも。さらには、命にかかわる病気が隠れている場合もあるので、注意が必要です。
頭痛の症状・原因、放置すると危険なケース、タイプ別の対処法をご紹介します。自分の頭痛の原因を知って、適切に対処するためにお役立てください。
頭痛は大きく分けて、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2種類あります。一次性頭痛は、明確な原因や特定の病気がないにも関わらず、定期的に頭痛を繰り返すのが特徴です。一次性頭痛はさらにいくつものタイプがあり、特に「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」は「3大慢性頭痛」と呼ばれています。
一方、二次性頭痛は、なんらかの病気や頭部のケガなどが原因となって引き起こされる頭痛です。一次性頭痛に比べると危険度が高く、放置すると命にかかわる場合があります。
一次性頭痛の中で代表的な片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の3タイプは、症状が慢性的に繰り返される場合があります。ひどくなると生活に支障をきたしたり、対処法を間違えると悪化したりするので要注意です。自分がどの症状にあてはまるのかを確認し、適切に対処しましょう。
片頭痛は、脈拍や心臓の鼓動に合わせてズキンズキンとした痛みが頭の一部分に生じるのが特徴です。吐き気・嘔吐を伴う場合があり、光・音・におい・気圧や温度変化に敏感になるのも特徴。頭痛が起こる前や頭痛が起きるのと同時に、突然視野の中にギザギザした光の波が出てくる(閃輝暗点)といった視覚性前兆が多くみられます。強い痛みが4時間~3日ほど持続し、体を動かしたり入浴したりすると痛みが増幅する傾向があるため、日常生活に支障をきたす人も。また、頭痛が月に15日以上の頻度で3か月を超えて続き、その中でも片頭痛の特徴を持つ頭痛が月に8日以上ある場合は、「慢性片頭痛」と呼ばれます。
片頭痛のメカニズムは、完全には解明されていません。複数の要因により三叉神経から痛みを引き起こす物質が分泌され、血管の拡張や炎症が起こり、頭痛につながると考えられています。また、ストレスを受けたときだけでなく、ストレスから解放された後にも、血管の拡張により片頭痛を生じる場合があります。
一次性頭痛の中で最も有病率が高いとされているのが、緊張型頭痛です。両側の後頭部・こめかみ・額を中心に、重苦しい感じや頭を締め付けられているような圧迫感が続きます。光や音に過敏になる人もいますが、片頭痛のような吐き気や嘔吐の症状はあらわれません。
痛みの強さは軽度~中程度です。毎日症状が出る場合と、時々症状が出る場合があり、30分程度でおさまるときもあれば、1週間ほど続く人も。片頭痛ほど日常生活に支障は出ませんが、症状が数時間でおさまらず、数か月以上続くケースもあるのです。頭痛が月に1日未満(年間12日未満)の頻度で起こるなら「稀発反復性緊張型頭痛」、15日以上起きるなら「慢性緊張型頭痛」と呼ばれ、回数が増えるほど痛みは強くなる傾向があります。
群発頭痛は、左右どちらか片方の目の奥がえぐられるような激しい痛みと、目の充血や涙・鼻水が止まらないといった症状があらわれるのが特徴です。睡眠中や、夜間から明け方にかけて多く発生し、症状はほぼ毎日あらわれて数十分から数時間続きます。1日に何度も頭痛が出る場合もありますが、一定期間が過ぎるとおさまります。脳血管の拡張が関係していると考えられていますが、症状が出るきっかけは完全に解明されていません。これまでは20~40歳代に多く発症し、とりわけ男性に多くみられる傾向にありましたが、近年は男女差が少なくなってきています。
二次性頭痛は、放置すると命にかかわる可能性のある頭痛です。寝不足や飲み過ぎ、目の使い過ぎといった特定の原因が思い当たらないにもかかわらず、いつもとは違う強い症状を感じたり、痛みが徐々に強くなったりしたら、二次性頭痛の可能性があります。
次の症状がみられたら、できるだけ早く病院を受診しましょう。
頭痛の対処法は、症状によって異なります。自分の頭痛がどのタイプにあてはまるのかをチェックして、適切にケアしましょう。
片頭痛の症状がみられたら、次の方法を試してみましょう。
痛む場所を冷たいタオルで冷やしましょう。入浴やマッサージは血管を拡張させ、痛みが増してしまうため、避けてください。
頭痛の症状が出ているときに体を動かすと、痛みが増す場合があります。また、光や音によっても痛みが増すため、できるだけ静かで暗い場所を選び、横になって過ごしましょう。
カフェインが含まれているコーヒー・紅茶・緑茶を飲みましょう。カフェインには、血管を収縮させる働きがあります。痛みが出はじめたタイミングで飲むのがポイントですが、連日過剰に摂取すると、頭痛を誘発するため注意してください。
緊張型頭痛の症状がみられたら、次の方法を試してみましょう。
蒸しタオルや半身浴で体をあたため、首や肩をマッサージ・ストレッチしましょう。緊張をほぐし、血行がよくなるようにケアしてください。
緊張型頭痛の原因は、身体的・精神的ストレスが大きく関係している場合があります。頭痛が出はじめたら、場所を移動して気分転換をしましょう。
痛みが非常に強い群発頭痛は、セルフケアや鎮痛剤だけでは対処するのが難しい頭痛です。また、大きな病気が隠れている可能性があるため、症状があらわれたら早めに専門医を受診し、医師の診断・処方に従って適切な治療を受けましょう。
病気が直接的な原因ではない一次性頭痛には、生活習慣の見直しも有効です。ストレスや疲労がたまらないように、適度に息抜きをして、規則正しい生活を心がけましょう。また、どのようなときに頭痛の症状が出やすいのか、どうすると痛みが軽くなるのか、自分自身をよく観察して記録しておくと対処しやすくなります。病院を受診して症状を伝える際にも役立ちますので、ぜひ試してみてください。
頭痛は誰にでも起こりうる症状の一つですが、中には日常生活に支障を来したり、命に関わる病気が原因であったりする場合もあるため注意が必要です。
特に今回ご紹介した片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛は定期的に強い頭痛が生じやすく、重症な場合には社会生活が困難になることも。これらの頭痛と診断されている方や疑われる症状がある方は、生活習慣を見直して頭痛が悪化しないよう注意しましょう。また、頭痛が生じたときの対処法を覚えておくのもよいですね。
一方で、慢性的な頭痛はセルフケアだけでは改善しないケースも少なくありません。強い頭痛が定期的に生じる方は、医療機関で適切な治療を受けた方がよい場合もあります。
つらい症状を我慢せず、医師に相談してください。
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