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【医師監修】睡眠不足の影響について。身体・こころ・生活からみる寝不足のリスクをまとめてチェック

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2024/02/28

睡眠不足は、身体・こころ・生活すべてに悪影響を及ぼします。場合によっては、頭痛や吐き気、抑うつ気分など心身の不調につながるケースも少なくありません。
睡眠不足のリスクは何となく知っているけれど、睡眠の体における役割を正しく理解したい、もっと睡眠について深く知りたい方も多いのではないでしょうか。
睡眠不足について詳しく解説していきますので「睡眠不足かどうかチェックしたい」「太るって本当?」など、お悩みを抱える方はお見逃しなく!

 

「睡眠不足」とはどんな状況?

睡眠不足とは、質のよい睡眠が十分にとれていない状態です。
私たちの身体には、睡眠と覚醒のバランスを司る体内時計が存在します。通常であれば、毎日ほぼ同じ時間帯で自然に眠くなり、7~8時間経つと目覚めるメカニズムになっているのです。日々の健やかな眠りと目覚めは、体内時計のはたらきによって保たれているところが大きいでしょう。
しかし、現代社会では、体内時計のリズムを狂わせ、睡眠不足を招く原因があらゆるところに潜んでいます。夜勤にともなう夜型の生活や残業、夜間の受験勉強などにより、体内時計はゆるやかに狂っていっているのです。
睡眠不足が続くと、「眠りにくさ」、「目覚めにくさ」、「夜中や早朝に目覚める」など、より睡眠の質を下げる「睡眠障害」を引き起こすケースも珍しくありません。睡眠不足は、心身のあらゆるところに支障をきたすリスクのある状況だと念頭に置きましょう。

睡眠時間の理想は「6時間~8時間未満あたり」

日本の成人に必要な睡眠時間は、おおよそ6時間以上8時間未満であると考えられています。成人のなかには、6時間未満しか眠らないショートスリーパーもいます。成人で6~8時間の睡眠がとれている人の割合は5~6割程度とされており、日本では睡眠時間が不足している人が多いことが分かっています。
日の長さによる変動や個人差もありますが、自身の睡眠時間の振り返りの目安にしてみてください。

睡眠時間は年齢とともに減少

睡眠時間は季節性や個人差のみならず、年齢によってもゆるやかに変動していきます。理想的な睡眠時間の6時間以上8時間未満を確保できている人の割合は以下のように年代によって異なります。

  • ・ 20~39歳:54.0%
  • ・ 40~59歳:47.7%
  • ・ 60歳以上:55.8%

働き盛りの年代は十分な睡眠が確保できていない人が多いことがわかりました。慢性的な睡眠不足は心身の不調の原因となるため、多くの人が健康リスクを持った状態にあると考えられます。

※出典:「国民健康・栄養調査/厚生労働省(令和元年)」

産後・更年期は睡眠不足になりやすい

女性の睡眠時間は、妊娠・出産・月経などに関係するケースも少なくありません。
物理的な睡眠不足を招くのが産後です。授乳で睡眠が妨げられるのに加え、育児のストレスによるこころの問題が、睡眠に影響しやすくなります。
また、更年期も睡眠不足に陥りやすい時期です。更年期による自律神経バランスの乱れは、少なからず睡眠に影響を与えます。うまく眠れなくなると睡眠へのこだわりが強くなり、それがさらに気持ちを昂らせて眠れなくなるという慢性的な睡眠不足を引き起こしかねないのです。

睡眠不足のサインは「日中の眠気」にあり

自分が睡眠不足であるかどうか判断するためには、日中の眠気をチェックしてみてください。成人には、6時間から8時間の睡眠時間が必要とされています。とはいえ、年齢によって変わるうえに個人差もあり、先述の睡眠時間が適切とは一概にはいえません。日中の眠気から、睡眠不足になっていないかチェックしてみましょう。
チェックする時間帯は、昼過ぎを除く時間帯が推奨されています。昼過ぎの眠気は程度にもよりますが、ある程度であれば問題ないと思ってよいでしょう。

もし、日中に目覚めていられないほどの強い眠気を覚えるときは要注意です。仕事や学業の妨げになるのみならず、事故や怪我の原因にもなります。慢性的な睡眠不足は心身の病気にもつながるため、一度受診を検討してみましょう。

睡眠不足は「寝だめ」で解消できない

睡眠不足を解消したいからといって、睡眠はまとめてとれません。平日の睡眠時間が十分に確保できない方のなかには、休日に「寝だめ」をしようとする方も少なくないでしょう。睡眠時間を確保できた日は眠気がすっきりしても、根本的な睡眠不足の改善にはなりません。睡眠不足を改善するどころか体内時計のリズムが狂って、平日の夜に入眠しにくくなる、朝の目覚めにくくなる、といった症状が現れることも。逆効果になるケースも珍しくないのです。

 

睡眠不足がもたらすこわい影響とは?

睡眠不足の影響について。

まず、慢性的な睡眠不足は、心身の疲労回復を妨げると覚えておきましょう。疲労の蓄積は、身体だけでなく、こころや生活によくない影響をもたらす可能性があります。
すこやかな心身と生活を保つために、睡眠不足がもたらす影響を「身体」「こころ」「生活」の3方面から詳しくみていきましょう。

身体への影響

身体の疲労をうまく回復できないと、日中の疲労感や倦怠感につながります。寝不足の日は何となくだるかったり、身体が重かったり、体に異変を感じたりしませんか?また、眠りのつきくさや目覚めにくさは、頭痛や吐き気などの不調を招くケースも少なくありません。

病気のリスクを向上させる

睡眠不足にともなって睡眠の質が低下すると、生活習慣病やうつ病など心身の病気にかかるリスクが高まるとさまざまな調査から明らかにされています。
生活習慣病患者のなかには睡眠にトラブルを抱える方が多いのです。
生活習慣病といえば、高血圧や糖尿病は、最悪のケースで死にもつながってしまいます。睡眠不足などで睡眠の質が低下している方と、良質な睡眠を得られている方とでは、糖尿病になるリスクに1.5~2倍ほど※の差がみられるとわかっています。

※出典:睡眠と生活習慣病との深い関係/厚生労働省(e-ヘルスネット)

睡眠不足が太る原因にも…

睡眠不足は、肥満になるリスクも抱えています。寝不足によって食欲を高めるホルモンの分泌が促されるのです。1日たっぷり眠った日に比べ、睡眠不足の日にこそ太るリスクが高まるといえます。
もし肥満になった場合には、睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクも高まります。睡眠不足は太るリスクのみならず、息のとおりが悪くなって起こる、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなってしまうので注意が必要です。
さらに睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を大きく低下させるため、さらに肥満のリスクが高まるという悪循環に陥る可能性もあります。

こころへの影響

睡眠不足が続くと、こころの健康にも影響を及ぼします。よく眠れないと休養感が減少して疲労が蓄積し、なかには「なかなか寝付けず、朝は気分が晴れない」「眠った気がせずスッキリ感に欠ける」と感じる方も少なくないでしょう。
睡眠不足による休養感の減少は、うつ病とのつながりもあります。日本の成人を対象にした研究では、睡眠による休養感が得られない方ほど抑うつの度合いの高さが有意に目立つという結果が2010年に発表されています※。うつ病は食欲の低下や疲労感、頭痛に加え、睡眠問題を加速させる可能性があります。睡眠不足は身体のみならず、こころにも悪影響になると心得ておきましょう。

※出典:「Association between depression and insomnia subtypes: a longitudinal study on the elderly in Japan」(2010 Dec;33(12):1693-702. doi: 10.1093/sleep/33.12.1693.)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21120150/

日常生活への影響

睡眠不足は心身だけでなく、日常生活にも影響を与えます。作業能率を低下させ、仕事や学業、私生活において、ケアレスミスを引き起こす可能性があるのです。
健康な成人を対象にした研究では、起床から15時間以上たつと酒気帯び運転と同様の作業能率まで低下するとの研究結果も2006年に発表されています。日常生活における睡眠の必要性がわかるでしょう。

「睡眠不足の状態が何日続けば倒れる」といったデータは明らかにされていません。しかし、264時間12分の不眠状態を続けた1964年の実験によると、開始から徐々に幻覚や集中力の低下といった変化が確認※されています。
仕事や学業、家事などを円滑にはこぶためにも、睡眠不足のサインには目を光らせておきましょう。

※出典:「睡眠の話」(化学と生物 Vol. 11, No. 4)
 

睡眠不足のない健やかな生活を目指す方法

睡眠不足を解消するカギは、疲労を溜め込まない生活習慣です。本来、睡眠は心身の疲労を回復させる役目を担っています。疲労回復がスムーズにいくと、疲労感やだるさを軽減できるのみならず、日中の眠気による事故やケアレスミスも防げるでしょう。
心地よく眠って疲労回復するために、日常生活での取り組みをご紹介します。

  • ・適度に運動をする
  • ・朝食をきっちりとる
  • ・就寝の1時間前にはぬるめのお湯で入浴する
  • ・就寝時は部屋をほどよい暗さにする
  • ・就寝1~2時間前はスマホやゲーム機の操作・過度な飲酒・喫煙・カフェインを控える

日中の適度な運動は、眠りにつきやすくし、中途覚醒しにくい状態に導きます。また、朝の食事は、朝の目覚めやすさを後押ししてくれるでしょう。ただし、寝る直前の過度な運動や夜食は入眠を邪魔するため、控えるのをおすすめします。入浴法や就寝時における照明の設定に加え、就寝前の行動もあわせて見直してみてください。

仕事や学業で睡眠不足になりやすい方へ

睡眠の質は時間だけが重要ではないとはいえ、ある程度睡眠時間を確保するのは大切です。しかし、仕事や学業、家事・育児が忙しく、なかなかまとまった睡眠時間を確保しきれない方もいるでしょう。夜に眠る時間がないなら、午後の早い時間に30分ほどの昼寝タイムを設けてみてください。疲労感がやわらぎ、日中の作業能率アップが見込めるでしょう。

 
睡眠不足による悪影響のない生活を目指して

睡眠不足は、「上質な睡眠時間」を確保できずに起こります。日本の成人が必要とする睡眠時間は6時間以上8時間未満とされています。もちろん年齢や環境によって一概にはいえませんが、睡眠時間は加齢とともに減少傾向にあり、女性は産後や更年期に睡眠時間の確保がむずかしくなりがちです。日中に感じる眠気を目安に、まずは睡眠不足かどうかチェックしてみましょう。
睡眠不足は心身の疲労を蓄積させ、日常生活に影響を与えます。身体のだるさや重さのほか、集中力の低下や頭痛、場合によっては太る可能性もあるのです。睡眠不足が続くなら、生活習慣病やうつ病のリスクが高くなる可能性も否めません。
睡眠不足を解消するためには、疲労を蓄積させない生活習慣にカギが隠れています。運動や食事、環境など多方面に気を配って、睡眠不足のない生活を目指しましょう。

 
監修医師からのアドバイス

良質な睡眠は心身の健康を維持していくための基本となります。十分な睡眠がとれないと心身の不調を来すケースも珍しくないのです。

良質な睡眠は単に長く睡眠時間を確保すればよいわけではありません。翌朝に熟眠感を得られるかが大切です。また、眠れないからといって8時間以上に渡って横になった状態でいるのも健康に良くないことが分かっています。
睡眠時間は年齢を重ねるごとに短くなる傾向にありますが、しっかり体が休まっている場合には長さにこだわる必要はありません。すっきり目が覚めたら活動を開始しましょう。

なお、眠りにつきにくい、夜中や早朝に目が覚める、といった症状が続く場合は病気が原因の可能性もあります。具体的には、貧血、甲状腺機能低下症、肝臓病、腎臓病、うつ病などの病気によって良質な睡眠が妨げられることがあるのです。
今回ご紹介したような良質な睡眠への対策を講じても、熟眠感が得られる日中にだるだや眠気を感じる時は、軽く考えずに医療機関を受診して下さい。

  • 成田

    監修医師成田 亜希子

    2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
    臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。 国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。 現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。