「昔は花粉症なんてなかった。」そんな話を聞いた経験はありませんか?実際、日本での花粉症の歴史は短いです。
なぜ、昔はなかった花粉症が、今や多くの人を悩ます病気になってしまったのでしょうか。
花粉症増加の原因には諸説あり、化学的な証明はありませんがどれも納得のできる説です。
花粉症は誰にとっても身近な問題となりつつあります。花粉症の歴史と、花粉症急増の背景について探ってみましょう。
目次
花粉症の患者は年々増加している?
花粉症患者は年々増加を続けています。
花粉症の時期になると、みなさんの周りでも「今年から花粉症になった」「鼻がむずむずし始めた。目がかゆい。」などの声を聴く機会も多くなっているでしょう。
花粉症は、今や国民病と呼べるほどに広がっています。そんな花粉症も昔はなかったとも言われています。
実際のところはどうなのか?日本での花粉症の歴史や、近年の花粉症患者の推移を見ていきましょう。
昔は花粉症はなかった?
花粉症は歴史の短い病名です。海外では1819年が初の診断例とされています。
いっぽう日本では、1961年にブタクサ花粉症が、1963年にスギ花粉症が初めて報告されています。
つまり、日本での花粉症の歴史は60年ほどしかありません。年配の方が「昔は花粉症なんてなかった」というのは、歴史からすると正しいのです。
日本で初めて花粉症が報告されたブタクサは、日本原産の植物ではありません。
戦後にアメリカによって持ち込まれた植物が、日本で初めての花粉症を発生させたのです。
しかし、花粉症の広がりをアメリカの責任とはできません。
なぜなら、日本では、昔から全国的にスギが生育しており、スギ花粉は日本でも昔から存在していたからです。
ヒノキやブタクサなどの花粉も古くから存在しており、花粉の存在だけを花粉症の原因とはできません。
花粉症の報告がされるまでは、花粉がアレルギー症状を引き起こすとは考えられていなかったのです。
花粉は昔から存在しているのに、なぜ今になって花粉症が急増しているのか?
その原因について多くの研究が進められています。ですが、決定的な原因は判明していません。
花粉症患者の推移
日本でどのくらいの花粉症患者が存在しているのか、正確な数字はわかっていません。
しかし、東京都や鼻アレルギーの全国調査など各種調査結果によると、日本において花粉症患者が急増しているのは間違いないでしょう。
東京都の調査によるスギ花粉症推定有業率は、次のとおりです。

また、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査による花粉症有病率は、次のとおりです。

いずれの調査結果でも、10年間のうちに10%ほどの増加が見られます。今や、花粉症は2人に1人は発症するほどの国民病となってしまったのです。
参照:環境省「花粉症環境保健マニュアル 2022」
参照:東京都「花粉症患者実態調査報告書」
花粉症増加の背景

日本で花粉症が増加している背景・理由については、多くの研究が進められており、その中での仮説や結論も示されています。
しかし、現在のところ花粉症の増加を化学的に立証する説は存在しません。ここでは、いくつかの仮説に触れてみましょう。
どれも説得力を持つ説と言えるのではないでしょうか。あなたは、どの説を正しいと感じますか?
花粉量の増加
先にも触れましたが、スギは昔から日本で生息していました。そのため、スギの存在自体を花粉症増加の原因と考えるのは難しいでしょう。
一方で、スギの存在自体ではなく、スギの増加による花粉量の増加を花粉症増加の原因と考える説は有力に唱えられています。
戦後の日本では、戦火によって焼け落ちた土地で、スギの植林が積極的に行われました。
そのため、戦前に比べてスギの量は増加し、結果として飛散する花粉量も増加したと考えられます。
従来の量では人体に影響を与えなかったスギ花粉が、量の増加によって影響を与えるようになったとの説は一定の説得力を持つでしょう。
しかし、古くから身近に存在するスギ花粉が、量の変化だけを原因として人体に影響を与えるようになったとは考えにくいです。
花粉量の増加だけでなく、日本人の体質の変化や環境の変化など、他の原因もあると考えるのが自然でしょう。
大気汚染の影響
花粉症急増の原因には、大気汚染の影響も挙げられています。
花粉が大気中の化学物質と付着した結果、鼻でのアレルギー反応を引き起こすとの説です。
花粉症を引き起こすのは、花粉に含まれるアレルゲン物質です。アレルゲン物質は、花粉が衝撃を受けて破裂する際に放出されます。
埼玉大学工学部・環境共生学科物質循環制御研究室の研究では、大気中の化学物質と付着した花粉は、きれいな花粉に比べて破裂しやすい性質を持つとされています。
つまり、大気汚染によって汚れた花粉が破裂し、アレルゲンを放出するのが花粉症を急増させる原因と考えられるのです。
食生活の影響
花粉症急増の原因には、日本人の体質変化もあると考えられています。
日本の食生活は、戦後の高度成長期を経て大きく変化しました。高たんぱく、高脂質の欧米型の食生活は、アレルギーを引き起こしやすいとされています。
実際、高度成長期を経た日本では、花粉症だけでなくアトピー性皮膚炎など他のアレルギーも増加しています。
食生活とアレルギーの関係も化学的に証明された説ではありません。
しかし、実際にアレルギー患者が増加している点から、食生活とアレルギーになんらかの関係があるのは否定できないでしょう。
花粉症は誰にとっても身近な問題
花粉症は、2人に1人が発症する病気で、誰にとっても身近な問題です。
前年までは症状のなかった人が、花粉症の季節になると急に花粉症を発症するケースも少なくありません。しかも、花粉症は一度発症したら完治が難しいのです。
花粉対策には、日々の心がけが欠かせません。マスクを着用する、うがい、手洗いをするなど簡単にできる習慣から対策を始めましょう。
日本での花粉症の歴史はわずか60年です。
その間に、花粉症は、2人に1人もの人が発症する国民病になりました。
花粉症が急増する現状を考えると、去年まで花粉症を発症していない人も油断はできません。
自分は大丈夫と考えずに、できる限り花粉を避ける生活を心がけてください。
すでに花粉症を発症している人は、なおさら花粉を避けなくてはなりません。
マスクやメガネを着用し、部屋に入る際には着替えるなど、日々の対策を怠らないようにしましょう。
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