小学校・中学校・高校での学級閉鎖の基準
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症が流行した場合、感染拡大防止のために一時的に学級全員を休みにする措置が「学級閉鎖」です。
感染規模によっては学年全体を休みにする「学年閉鎖」や学校全体を休みにする「学校閉鎖・臨時休校」の場合もあります。
インフルエンザやノロウイルス、風邪…何人欠席で学級閉鎖?
学級閉鎖は、学校保健安全法第 20 条に基づいて決定されます。
- (臨時休業)
- 第二十条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。
引用:「学校保健安全法」/e―Gov法令検索
国が定めているのは以上で、明確な人数の基準や学級閉鎖の期間は決められていません。また、国や自治体からの指示によって学級閉鎖が決まるわけでもないのです。学級閉鎖は校長が判断します。
では、校長は何を基準に学級閉鎖を決めるのでしょうか。特定の感染症による欠席が増えてきた場合、校長は以下を総合的に考慮して学級閉鎖を判断します。
- ・ 学校医の意見
- ・ 感染症の潜伏期間
- ・ 欠席している児童生徒の人数や経過
- ・ 学校のスケジュール(行事や休日)
学校保健法に欠席人数の基準は示されていませんが、『学校医・学校保健ハンドブック』によれば「欠席率が20%に達した場合は、学級閉鎖、学年閉鎖および学校閉鎖等の措置をとる場合が多い」とされています。
参照:「臨時休業の決め方」3,学校感染症発生時の対応について/学校保健
引用:『学校医・学校保健ハンドブック』
新型コロナ後 学級閉鎖の基準は変わった?
2023年5月に新型コロナウイルスは「5類感染症」の扱いになりました。学級閉鎖の基準は変わったのでしょうか。
実は、学級閉鎖の基準は新型コロナウイルス感染拡大の前後で変わっておらず、「5類」移行後に新たに示されたガイドラインや基準はありません。
ただ、新型コロナウイルスによる出席停止の期間の基準は短縮されました。5類移行前は「発症日の翌日から原則7日間」でしたが、移行後は原則「5日間」になりました。
参照:「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」/厚生労働省
「東京都では原則4日」学級閉鎖になった場合の自宅待機期間
学級閉鎖になった場合、期間はどれくらいになるのでしょうか。
欠席人数と同じく、国が定める明確な基準はありません。ケースバイケースで校長が判断します。
東京都を例にとると、「学級閉鎖は、当該学級の児童・生徒のおおむね10%以上がインフルエンザ様疾患で欠席した場合に検討し、休業期間は4日間を原則とする」とされています。
しかし以上の原則は「新型インフルエンザに関する対応」であり、すべての感染症で一律に4日間の学級閉鎖を行うわけではありません。
一般的には、2~5日間の学級閉鎖が多く、自治体独自に期間の基準を設けているところもあります。
参照:「新型インフルエンザに関する東京都の対応等」/東京都
「学級閉鎖になりそう」が分かる欠席人数は?
「子どもの話では欠席が増えている様子。学級閉鎖になるのかしら?」
親としては、学級閉鎖の有無は気になるところです。見てきたように、「何人休んだら学級閉鎖」の明確な基準はありません。
しかし、ひとつの感染症でクラスの10~20%が欠席したら、学級閉鎖の可能性を考えておきましょう。
幼稚園や保育園の学級閉鎖の基準
学校に対し、幼稚園や保育園では学級閉鎖(臨時休園)の基準はどうなっているのでしょうか。幼稚園と保育園は就学前の子どもが通う施設である点は同じですが、管轄省庁や学級閉鎖のよりどころとなる法律が異なります
幼稚園の学級閉鎖の基準は?
幼稚園は小学校や中学校、高校と同じく文部科学省の管轄です。学級閉鎖についても、学校と同じ「学校保健安全法」が基準です。
つまり、園長が学校の校長と同じように判断します。
保育園の学級閉鎖は?
保育園は厚生労働省が管轄する児童福祉施設です。学級閉鎖や臨時休園については、自治体の基準や園の感染状況を参考に園長が判断します。
小学校や幼稚園と同じく、20%程度の欠席者が出たら学級閉鎖(臨時休園)と定めている園もある一方、「家庭において必要な保育を受け難い乳幼児を預かる」のが保育施設等の役割であるとして、学級閉鎖(臨時休園)の判断は教育施設よりも慎重に行うべき、とする園もあります。
つまり、学級閉鎖の基準は自治体の基準や園の考え方によって異なるのです。
学級閉鎖期間 子どもが元気な場合の過ごし方
前述したように、学級閉鎖期間は2~5日間くらいが一般的です。子どもが元気な場合、どう過ごせばよいのでしょうか。
外出は?遊びに行きたいと言われたら?
学級閉鎖は感染拡大を防ぐ目的で行われるもの。
多くの感染症には潜伏期間があるため、一見元気に見える子どもでも、あとから発熱や体調不良の可能性があります。
また、寒い中外出して体力を消耗してしまったり、学校以外の外出先から感染したりするかもしれません。基本的には、学級閉鎖期間中の外出は避けましょう。
子どもが「遊びに行きたい」と言う場合は、学級閉鎖になった理由や外出のリスクを子どもの年齢や理解度に合った表現で伝えてみてはいかがでしょうか。
親は仕事に行ってもOK?
学校や園からとくに指示がない限り、学級閉鎖中でも家族の外出は制限されません。
もちろん、発熱やだるさなどの症状がある時には仕事や外出は控えるべきですが、家族が皆元気ならば、親の通勤自体に問題はありません。
しかし、中には子どもには症状が出ないのに親が感染症にかかってしまう場合もあります。
学級閉鎖期間中は子ども本人だけでなく家族もこまめに検温し、体調をチェックしておきましょう。
学級閉鎖期間中の家での過ごし方
学校や塾、習い事で忙しい子どもの場合、ゆったり過ごしたり親子で会話したりする時間は意外に取れないもの。
学級閉鎖期間は、普段できない活動にじっくり取り組むチャンスでもあります。
学習
学校によっては学級閉鎖期間中の課題が出るので、プリントやメールでの連絡をチェックしましょう。
「GIGAスクール構想」のもと、学校では児童生徒1人に1台ずつ端末が整備されました。配付した端末を活用し、学級閉鎖期間中も課題や連絡を配信する学校も増えています。
学校の時間割に近いタイムスケジュールで過ごせば、生活リズムの乱れも防止できると考えられます。なるべく普段と同じペースで学習に取り組めるとよいでしょう。
また、最近は無料の学習動画や学習アプリが充実しています。
NHKが運営する「NHK for School」では各教科の学習に楽しく取り組める動画がたくさん公開されているので、WEBサイトをチェックしてみましょう。
学級閉鎖期間中に予習や復習ができると、学習面での自信が高まり、学級閉鎖終了後の登校がより楽しみになるかもしれません。
参照:「NHK for School」/NHK
家事・お手伝い
親が家にいられるなら、一緒に料理や部屋の片付けをするのもいい経験になります。楽しく家事スキルが身につき、お手伝いもできて一石二鳥です。
この機会に、お菓子作りや子ども部屋の整理整頓にもチャレンジしてみましょう。
本や映画
読書や映画、アニメも楽しいもの。親子でじっくり感想を話し合ってみてはいかがでしょうか。
ただ、頭が痛いのが、ゲームや動画サイトに没頭してしまう問題です。しかし、完全禁止は親子共にストレスになるので、学級閉鎖期間中は仕方ないと割り切り、時間を決めてあげましょう。
おうちエクササイズ
元気な子どもが家の中で大人しく過ごすのは簡単ではありません。
インターネット動画やTV番組、DVDでダンスを踊ったりエクササイズをしたりするのもおすすめです。運動不足が解消でき、ストレス発散にもつながります。
学級閉鎖でも親が仕事を休めない時の預け場所
学級閉鎖は突然やってきます。親が仕事を休めない場合、子どもの預け先はどうなるのでしょうか。
子どもにお留守番をさせる
子どもが一定の年齢に達し、すでにお留守番経験がある場合は、子どもだけで過ごさせるのもひとつの手です。
気に留めておきたいのは、「朝は元気でも、親が不在の間に体調が悪くなる可能性がある」点。休憩時間にこまめに連絡して体調を尋ねたり、可能なら早目に帰宅したりしましょう。
祖父母や夫など、家族の協力を得る
子どもの祖父母(自分や配偶者の親)に来てもらったり、夫婦が交代で休んだりと、家族で協力して乗り切るのもひとつの手です。
親を頼る場合は、子どもからの感染リスクを考慮に入れましょう。祖父母が感染し、寝込んでしまったケースもあります。
たとえ子どもが無症状でも、お互いにマスクをしたり、食事は別々にとったりしましょう。
学童保育を利用する
公立の学童保育や学校に附属した学童保育の多くは、学校が学級閉鎖や休校になると閉室になります。
一方、民間の学童保育は、子どもの体調に問題がなければ預かってくれる場合もあります。ただしすぐに定員を超えてしまう場合があるので、予約をするなら早目がおすすめです。
自治体のサポートを利用する
自治体によっては、学級閉鎖期間中の子どもを預かるサポートを利用できる場合があります。一時預かり保育やファミリー・サポート・センターを調べてみましょう。
また、病児保育で学級閉鎖期間中の子どもを預かってくれるケースもあります。
同じ状況の家庭が多いと、すぐに予約が埋まるかもしれません。
学級閉鎖の連絡が来たらすぐに連絡できるよう、事前に下調べをしておきましょう。
民間のシッティングサービスを利用する
子どもの預け先が見つからないときは、民間のベビーシッターやチャイルドシッターを利用する方法があります。
病児保育に対応しているところは、学級閉鎖期間中でもOKのケースが多いです。確認してみましょう。
習い事や塾はどうする? 行く・行かないの判断基準
学級閉鎖が感染拡大防止を目的としていると考えると、習い事や塾も欠席が基本となります。
しかし、大事な発表会や試合、テストを控えている場合や子ども本人が「休みたくない」と強い意志をもっている場合は、親としても悩んでしまうのではないでしょうか。
学校や習い事・塾からのお知らせをチェックする
学級閉鎖期間中の方針については、学校や習い事、塾からの連絡をチェックしましょう。
「学級閉鎖期間中のお子さんは全ての外出を控えてください」と指示される場合もあれば、「検温して体調に問題がなければ通ってもOK」とする場合もあります。
判断に迷う場合は、習い事や塾に問い合わせてみましょう。
子どもの体調や予防接種の有無、学級閉鎖の期間を聞かれる場合があるので、答えられるよう整理しておくと安心です。
振替が可能なら依頼する
学級閉鎖期間中は通えない場合、振替レッスンや振替授業が可能か尋ねてみましょう。
欠席の振替制度が設けられていなくても、学級閉鎖の場合は対応してくれる可能性があります。
オンラインでの受講を検討する
新型コロナウイルスの流行により、習い事や塾でも、オンラインでの受講環境が整いつつあります。
運動系のスイミングやサッカーは対面受講でないと難しいですが、英会話やピアノはオンライン受講が可能な教室もあるようです。
先生としても感染リスクのある子どもが通ってくるより、オンラインで授業やレッスンができる方が安心なはず。まずは問い合わせてみましょう。
マンツーマンレッスンの場合は相談してみる
他に受講生や先生がいない環境であれば、学級閉鎖期間中でも対応してくれる場合があります。アットホームな習い事や個別指導の塾、完全マンツーマンレッスンの場合は行ってもよいか相談してみましょう。
もちろん、「親子ともに健康」が大前提です。入念に体調チェックと感染防止対策を行いましょう。
どうしても行かせたいなら簡易検査もおすすめ
習い事や塾によっては、簡易検査の実施を求められる場合があります。また先方から求められない場合でも、検査で陰性と分かれば「行かせたい」と伝えやすくなるでしょう。
もちろん簡易検査の精度が100%確実とは言い切れず、あくまで自己責任での使用となりますが、もしもの時のために簡易検査キットを常備しておくと良いでしょう。
学級閉鎖は子どもの健康を守る手立て
忙しい親の立場からすると、学級閉鎖は「困りごと」「迷惑」と捉えがちです。しかし、学級閉鎖は感染拡大を防ぐための有効な手立て。我が子や周りの子の健康を守るために必要な制度でもあります。
子どもの預け先を確保しておき、留守番の練習をさせておけば、災害での休校や親の体調不良の時にも役立つので、備えておいて損はありません。
家族で体調管理に気を配り早目の予防接種を心がけながら、感染症の季節を乗り切りましょう。
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