学級閉鎖になるのはどんな時か
感染症が流行した場合、感染拡大防止のために一時的に学級全員を休みにする「学級閉鎖」。学校保健安全法第 20 条に基づく措置ですが、明確な人数の基準や学級閉鎖の期間は定められていません。
小学校から高校までの学校と幼稚園は文部科学省の管轄であり、学校長や園長が学校保健安全法に基づき学校・学級の感染状況や学校医の意見などを元に判断します。
保育園は厚生労働省が管轄する児童福祉施設です。学級閉鎖は自治体の基準や園の感染状況を参考に園長が判断しますが、仕事をもつ保護者に配慮して、できるだけ休園しない方針の保育園も多いのです。
『学校医・学校保健ハンドブック』によれば「欠席率が20%に達した場合は、学級閉鎖、学年閉鎖および学校閉鎖等の措置をとる場合が多い」とされています。期間は2~5日間が一般的です。
参照:「臨時休業の決め方」3,学校感染症発生時の対応について/学校保健
引用:『学校医・学校保健ハンドブック』
関連記事:学級閉鎖の基準とは?習い事や外出はどうする?期間や欠席人数の目安、家での過ごし方を教員が解説
学級閉鎖期間中、親の仕事はどうする?
学級閉鎖は急に決まります。働く親としては、「我が子の様子は気になるけれど仕事も休みづらい……」と悩んでしまいますね
学級閉鎖期間中に仕事に行ってもよいか
学級閉鎖期間中の対応は職種や業種によって異なります。職場の規則を確認しましょう。
「子どもが新型コロナウイルス・インフルエンザ陽性なら親も出勤停止」「学級閉鎖でも子どもの体調に問題がなければ出勤可」など、規則が明文化されている職場が増えています。
明確な規則がない場合は上司に相談してみましょう。
学級閉鎖で親が仕事を休む基準
職場に学級閉鎖期間中の勤務についての規則がない場合は以下の基準を元に検討しましょう。
潜伏期間が過ぎ、子どもが健康な状態か
学級閉鎖期間が始まった直後は潜伏期間中であることが多く、子どもは急に発症して体調を崩す可能性があります。
できれば潜伏期間(インフルエンザなら1~3日間、新型コロナウイルス感染症なら2~3日間)は親が仕事を休んで付き添うか、病児に対応できる方に預けられると安心です。潜伏期間が明けて子どもの体調に問題がなければ安心して出勤できます。
リモート勤務や時間休といった柔軟な働き方ができるか
職場によっては申請すればリモート勤務への切り替えができる場合があります。また1日休むのは難しくても、半日・数時間単位で休めるかもしれません。学級閉鎖の可能性を職場に伝え、交渉できるか検討しましょう。
体調の変化に備え、勤務中でも子どもや預け先との連絡がとれるか
子どもを誰かに預けたり、留守番をさせたりした場合、体調が急に悪くなったときすぐに連絡が取れる状態にしておきましょう。
「勤務中は携帯電話を所持できない」「仕事中は忙しく、子どもに連絡をとる暇がない」場合、急な体調の変化に対応できません。可能なら休んだ方が安心です。
万が一親自身が感染していた場合、職場に与える影響が大きいか
親自身が医療や介護、福祉の現場で働いている場合、万が一我が子から感染した状態で出勤してしまうと、患者や利用者への影響が懸念されます。感染症を職場に持ち込まないようにしたいですね。
人手不足で休みづらいでしょうが、感染拡大リスクを最小限に抑えるため、あえて出勤を控える選択を検討してみてください。
学級閉鎖中の子どもの預け先
親が仕事を休めない場合、子どもの預け先を探す必要があります。預け先として検討できる主な方法を、いくつか挙げておきます。
家族や親族の協力を得る
夫婦が交代で休んで乗り切るのはもちろん、子どもの祖父母(自分や配偶者の親)、自分の兄弟姉妹など親族の協力を得るのもよい方法です。
ただし、親族が高齢の場合は万が一感染した場合のリスクが大きいので、とくに感染防止対策を心がけましょう。
学童保育を利用する
公立の学童保育や学校に附属した学童保育の多くは、学校が学級閉鎖や休校になると同じく閉室となってしまいます。
子どもが健康ならば預かってくれる民間の学童保育もありますが、すぐに定員を超えてしまう場合が多いので、予約をするなら早目に動きましょう。
自治体のサポートを利用する
自治体によっては、学級閉鎖期間中の子どもを預かる制度を整えています。
一時預かり保育やファミリー・サポート・センターを調べてみましょう。また、病児保育で学級閉鎖期間中の子どもを預かってくれるケースもあります。
民間のシッティングサービスを利用する
民間のベビーシッターやチャイルドシッターの中で病児保育に対応しているところは、学級閉鎖期間中でも預かってくれるケースが多いです。
ママ友と助け合う
近所のママ友にお願いしたり、ママ友の子どもを預かったりするケースもあります。
助け合える関係の友人がいるのはすばらしいですが、お互いの子どもが感染していた場合、うつしあってしまうかもしれません。
また緊急時を考えると、学級閉鎖期間中の預かりをママ友にお願いするのはリスクが高いといえます。「ママ友は最後の手段」ととらえておくのが賢明ではないでしょうか。
学級閉鎖中に留守番をさせるときは?
どうしても親が仕事に行く必要があり、子どもの預け先がない場合は、留守番を検討します。しかし、子どもを家に一人にしておくのは何かと不安ですね。留守番の目安や注意点をお伝えします。
留守番が可能な年齢の目安
子どもが一人で留守番できるのは何歳くらいからでしょうか。
一般的には、7歳(小学校1年生)くらいから留守番の経験を積む子が多いようです。
もちろん子どもの発達には個人差があるので、年齢はひとつの目安でしかありません。
普段はしっかりしている子どもも、一人ぼっちになると急に心細くなってしまうかもしれません。一方、留守番の経験を重ねるうちに生活スキルが身につき、ぐんと成長する子どももいます。
学級閉鎖中の留守番の注意点
学級閉鎖を留守番で乗り切る場合に意識しておきたいポイントをまとめました。子どもの安全を第一に、緊急時の対応についても確認しておいたほうがよいでしょう。
連絡手段を確保する
留守番中に起きる不安や体調不良に備え、いつでも親子で連絡がとれるようにしておきましょう。
携帯電話を持っていない子どもには、固定電話の使い方を教えておきます。親の携帯番号を電話機に登録しておき、簡単な操作だけで子どもから電話がかけられるようにしておくと安心です。
携帯電話を所持している子どもの場合は、メッセージアプリですぐに親と連絡がとれるよう設定を。携帯電話のルール設定やフィルタリングは必須ですが、緊急時に連絡手段があるのは心強いものです。
子どもが携帯電話を持っておらず、固定電話もない場合は、家庭にあるタブレットでもメッセージアプリが使用できます。ダウンロードしておきましょう。
デバイスの準備が難しいときは、近所の知り合いや親族に頼み、緊急時に子どもと連絡が取れる手段の確保が必要です。
急な体調不良時の対応を決めておく
一人で留守番をしていると、急な発熱や嘔吐などの体調不良に見舞われる可能性もゼロではありません。
体温計の置き場所を伝え、自分で体温が測れるように練習しましょう。同時に救急セットの保管場所も伝えておくのもおすすめです。
また、子どもは体調不良をがまんしてしまう場合があります。「具合が悪くなったらすぐに連絡してね」と伝えておきましょう。
災害時への備えをしておく
子どもが一人で留守番をしている時に地震や火事が起きないとは限りません。
念のため、避難場所を親子で確認しておきましょう。非常食や家具転倒防止といった対策も必要です。
慣れないうちの留守番はできる限り短時間にする
低学年の子どもや留守番に不慣れな子どもにとって、丸一日の留守番はハードルが高いもの。半日や1~2時間で済ませられたらそれに越したことはありません。
夫婦が交代で休みをとったり、短時間でも祖父母に来てもらったりして、留守番の時間をできるだけ減らしましょう。
学級閉鎖で留守番させる時の約束ごと
安全に過ごせるよう、学級閉鎖期間中の約束を子どもと話し合って決めておきましょう。
約束の例を挙げておいたので、参考にしてください。前述の避難場所と一緒に、子どもにわかるように紙に書いて壁に貼っておくと、いつでも確認できます。
<子どもだけでの留守番時の約束例>
- ・ 玄関・窓の戸じまりを忘れない
- ・ 火や包丁は使わない(温められずに食べられるメニューがおすすめ。どうしても温めるときは電子レンジを使用させる)
- ・ 電話や玄関のチャイムが鳴っても出ない
- ・ 勝手に外出したり、友達を家に入れたりしない
- ・ ゲームや動画の時間を守る(可能なら制限時間の設定を)
- ・ 疑問点や不安、体調の変化があったら親に連絡する
学級閉鎖で仕事を休む期間の補償について
職種や勤務形態によっては、仕事を休むと収入減に直結する恐れがあります。学級閉鎖で仕事に行けない期間の賃金を助成してくれる制度はあるのでしょうか。
令和5年3月31日までの休暇分については、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」が設けられていました。終了後、引き続き創設されたのが「両立支援等助成金」制度です。
両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))
厚生労働省は、令和5年4月1日以降に取得した休暇を対象として、両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))の申請受付を行っています。
支給対象
新型コロナウイルス感染症への対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を行う労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主が対象です。
つまり、休暇をとった保護者本人ではなく、有給休暇を認めた事業主に対して支払われます。
助成額
労働者1人あたり10万円、1事業主につき10人まで(上限100万円)支払われます。
対象となる子ども
1.新型コロナウイルス感染症への対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校等(※)に通う子ども
※ 小学校等:小学校、義務教育学校の前期課程、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等
2. ⅰ)~ⅲ)のいずれかに該当し、小学校等を休むことが必要な子ども
ⅰ)新型コロナウイルスに感染した子ども
ⅱ)風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
ⅲ)医療的ケアが日常的に必要な子ども又は新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
気をつけたいのは、インフルエンザやノロウイルスによる学級閉鎖は対象にならない点です。
なお、「2.」に関しても新型コロナウイルス感染症が対象となりますが、風邪症状や基礎疾患等も対象となっており、陽性の検査結果は不要です。
支給にあたっては以下の要件を満たす必要があります。
支給要件
1. 次のどちらも実施されていること。
(イ)対象となる子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を年間7日以上取得できる制度の規定化。
(ロ)小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みとして、次のいずれかの社内周知。
- ・ テレワーク勤務
- ・ 短時間勤務制度
- ・ フレックスタイムの制度
- ・ 始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
- ・ 小学校等の休業期間に限定した短時間勤務・時差出勤の制度
- ・ 夜勤回数の制限
- ・ 労働者の子ども向けの保育施設の設置・運営
- ・ ベビーシッター費用補助制度 等
2. 労働者一人につき、1の(イ)に定めた特別有給休暇を1日(※)以上取得したこと。
(※)1労働日または、分割の場合は1日の平均所定労働時間
転載:「両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」/厚生労働省
会社が申請に応じてくれないときは
会社が申請してくれないときは、お住まいの地域の労働局に相談し、労働局から事業主に助成金の活用を働きかけてもらう方法があります。
会社が応じない場合、以前は「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」に個人が申請できる制度がありました。しかし、令和5年5月31日で受付終了しています。
突然の学級閉鎖で慌てないために
学級閉鎖は突然決まるもの。中には「本日の午後から学級閉鎖」となり子どもたちが早退してくるケースもあります。
慌てなくて済むよう、感染症が流行しそうな時期には、前もって準備をしておきましょう。
仕事関係の準備
感染症の流行シーズンには、学級閉鎖の可能性があり、休みを取るかもしれないと職場に伝えておきましょう。
慌てないよう、仕事のスケジュールを前倒しで進めておいたり、業務に必要な情報を同僚と共有しておいたりすれば、学級閉鎖以外のイレギュラーにも対応できます。
在宅勤務が可能な場合は、申請の準備をしておきましょう。必要書類や家で仕事をするためのデバイス・資料の準備も整えておくと万全です。
家族・親族内の準備
夫婦でスケジュールをすり合わせ、お互いに「休める日」「どうしても休めない日」「在宅勤務にできる日」をあらかじめ共通理解しておきましょう。
家庭内だけでなく、頼れる親族がいる場合は「学級閉鎖になったら預かってもらうかもしれない」と伝えておくと、いざというときに頼みやすくなります。
預け先の準備
学級閉鎖期間中は、どの預け先も希望者でいっぱいになりがちです。学級閉鎖が決まってから慌てて預け先を探していたのでは出遅れてしまいます。事前に調べて登録し、必要書類を一箇所にまとめておきましょう。
子どもの準備
普段から留守番の練習を始めておきましょう。
急に学級閉鎖になったからといって、未経験の子どもにいきなり丸1日の留守番をさせるのは大変です。最初は10分程度の短時間から始め、子どもの様子を見ながら、30分、1時間と少しずつ時間を伸ばして留守番に慣れさせておけば、学級閉鎖期間中を乗り切りやすくなります。
学級閉鎖は事前の準備が命
仕事をしている親にとって、突然の学級閉鎖は大変です。学級閉鎖期間に焦らず対応できるようになれば、仕事と育児の両立において上級者レベルといえるでしょう。
あらかじめ職場に理解を求めておいたり、家族で対応を話し合っておいたりすると、学級閉鎖以外の緊急時にも役立ちます。感染症が流行する季節には「学級閉鎖になる可能性は高い」と考え、前もって準備やシミュレーションをしておきましょう。
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